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異世界ネットショップマスター  作者: グランクリュ
第二章 ダンスホール編
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第百四十一話 シルバーランクの冒険者キーランド

「ん……ヴェリーヌさんから」



 今日は朝からヴェリーヌさんの新しいお店作りの手伝いをしている銀次郎。

お昼になったのでそろそろ休憩かなと思っていたら、エミリアが差し入れを持ってきてくれた。



「カールさん、ユルゲンさん休憩を取りましょう」



 アイテムボックスから屋台のテーブルセットを取り出し、エミリアが持ってきた水筒から果実水をカップに注ぐ。



「身体に染みるわい」



 ユルゲンさんは果実水を一気に飲み干すと、噴き出す汗を布で拭っていく。



「オマエのマジックバッグは物がたくさん入るな。おかげで作業が捗るぜ」



 銀次郎は大工仕事はからっきしだが、物の持ち運びでは貢献出来ていると思う。

実際はアイテムボックスでいくらでも収納出来るのだが、チートすぎるのでそこは黙っている。



「確かにギンジローさんのマジックバッグは羨ましいですな。馬車を使わなくても木材が運べるのですから」



 カールさんの木材商会で他の商会から買った木材も置いてあるが、マインツ家の保有する森から伐採して、乾燥させてから販売しているらしい。

森から木材を運ぶのが大変だというので、もし暇な時があればお手伝いしますよと伝える。



「さてと、またやりますか。お嬢さんご馳走様でした」



 カールさんがエミリアにお礼を言って、作業に戻る。

銀次郎も空になったカップを返して、午後の作業を開始するのであった。



●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●●



「あらーギンジローちゃん良い顔してるわね」



 今日の仕事を終えてハングリーベアーに戻ると、クラーラさんが出迎えてくれた。

汗をかいて肌はベトついていたが、クラーラさんは男らしいと褒めてくれる。



「今日はいっぱい働きましたよ。お腹ペコペコなんで井戸で身体を洗ったら食堂に行きますね」



 汚れた身体を井戸水で洗い流す銀次郎。

日本にいた頃は井戸水なんて使った事もなかったが、頭からかぶるだけで一気に疲れが吹き飛ぶ。



「ん〜サイコー。それじゃ今度の喉をシュワシュワした液体で洗い流しますかね〜」



 カウンター席に座りエールを注文する銀次郎。

するとハンツがエールの入った木のジョッキをすぐに持ってきてくれたので銅貨5枚を渡す。



「ハンツありがと今日は呑むよ〜。プロージット!」



 銀次郎はジョッキを前に突き出した後、エールを喉に流し込む。

シュワシュワで喉を締め付けられる快感。

この一杯の為に生きているとさえ思えてくるが、喉は潤ってもまだまだ身体がエールを欲している。

空になったジョッキをテーブルに置いて、ハンツにお代わりを頼む。



「ギンジローちゃん食べ物はどうする?」



 クラーラさんに今日のおすすめを聞くと、ホロホロ鳥と野菜の串焼きが美味しいよと教えてくれた。



「それじゃホロホロ鳥のやつとチーズの盛り合わせを貰えますか?」



 先にお代わりのエールとチーズの盛り合わせが届いたので、バーニーさんが串焼きを焼く姿を見ながら呑ってると、宿泊の冒険者達も食堂に顔を出し始める。



「ギンジロー今日は早いな。一人じゃ寂しいだろ? こっちきて一緒に呑もうぜ」



 顔見知りの冒険者達に声をかけられたので、テーブルに移る銀次郎。

今日は大物が狩れて稼ぎが良かったので、一杯ご馳走してやるとエールを注文してくれた。



「今日の冒険の無事と、大物を狩れた事を祝ってプロージット!」



 木のジョッキを力強くあててエールをグイッと呑る。

冒険者達はマインツハンバーグを注文。

届くまでの間テーブルが寂しいので、たべかけのチーズの盛り合わせと、ホロホロ鳥と野菜の串焼きを提供した。



「石みたいな食べ物って知ってるか? ギンジロー」



 銀次郎を誘ってくれた冒険者のキーランドには、お気に入りの子がいるらしい。

冒険者ギルドの受付嬢ローザ。

胸が大きくて気立が良いので冒険者の間では大人気なのだが、幾多の漢たちが口説いても良い返事は貰えていない。



 キーランド自身も何回も振られているのだが、今日は大物が狩れたので思い切って食事に誘ってみた。

するといつもは笑顔を返されるだけだったのに、石が食べれるお店があるならと返事があったのだ。



「石だけじゃ分からないですよ。他に何か言ってませんでした?」



「ローザちゃんが子供の頃に父親と市場に行って食べたらしいんだ。父親は内緒だよって焼かずにそのま食べたらしい。それが一番美味いんだとよ」



 全く分からない。

石ってどんな大きさなの? 味は?

まとめるとこんな感じになった。



1、美味しい石


2、焼かないで食べるのが一番美味いと父親が言ってたが、焼いたのも美味しかった


3、ローザちゃんは一回しか食べた事がない


4、両親は天国に旅立ってしまったので、石がなんだったか聞く事が出来ない


5、大人になったローザちゃんが市場で探しても石は見つからなかった




「ん〜そもそも石ってたべれないですよね?」



「そりゃそうだろ」



「もしかして玉ねぎですかね?」



「玉ねぎなら市場で売ってるだろ」



 石が何なのか全く分からないキーランドと銀次郎。

すると他の冒険者達もハングリーベアーに戻ってきたので、一緒に呑みながら考える事に。



「確かローザ嬢は港町出身だな。両親が事故で亡くなって、親戚のいるマインツに連れてこられたらしい」



「ローザちゃんは俺がカウンターに行くとニコッと笑ってくれるんだ。たぶん俺の事好きなはずなんだけど、デートに誘っても断られるんだよね」



「ブロンズランクのお前じゃ、ローザちゃんの方が稼ぎはあるだろ。お前じゃ無理」



「キーランドに言われるならまだ分かるが、オマエには言われたくねーよ」



 答えから遠ざかってる気もするが、キーランドさんの為にローザさんの情報や、自分がフラれたときの事を話し合う冒険者達。



「オマエらは本当に馬鹿だな。ローザが胸ばかり見られて困ってるって言ってたぞ」



 隣の席で食事を取っていた女性冒険者パーティーのリーダーが、エールのジョッキ片手に絡んできた。



「お前と違ってローザちゃんの胸は武器なんだよ。お前は冒険者なのに武器持ってねーじゃねーか」



「シルバーランクのアタイに喧嘩売ってんだな。よーし分かった表出ろ」



 するとキーランドさんが二人の間に入る。



「エマ悪かったな。エール奢るから俺の顔に免じて抑えてくれ」



「アタイはそいつに腹立ててんだよ。キーランドが謝る事じゃねぇ……仕方ねぇからウチのパーティー全員にエールで手を打ってやる」



「すまねぇな。オイ謝れ」



 キーランドさんが喧嘩を仲裁すると、ルッツが素早くエールを持ってきた。



「さぁこれで全部洗い流すぞ!プロージット!」

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