第百二十七話 ご機嫌なクーノさん
「んーーぬぅ」
いつもの様に陽の光で目覚めた銀次郎は、背筋を伸ばしてから起き上がる。
庭に出て井戸水を頭からかぶると、とっても気持ち良かった。
普段から清潔にしているが、今日は一応クリーンの魔法も掛けておく。
「さてと、今日もサイコーの一日にするぞー」
両手で顔をパチンとしてから食堂へ向かう銀次郎。
「ギンジローちゃんおはよー。なんだか顔が赤く腫れてるけど大丈夫?」
どうやら気合を入れすぎてしまったようだ。
クラーラさんに指摘されて恥ずかしい気持ちになりながら、いつものカウンター席に座る。
「ギンジローさんおはようございます」
「おーエデル、ハリーもおはよー」
二人は相変わらずモーニングハンバーグをたべている。
朝から胃は重たくないのか心配だが、おいしそうにたべる二人を見て野暮だったなと反省する。
「ハリー、明日ハンバーグの先生になってもらってもいい?」
「何それ? 良いけど」
ソフィアの友達がマインツハンバーグに興味があって、明日ハングリーベアーにたべにくると伝えると引き受けてくれた。
バーニーさんとクラーラさんにもお願いすると、快く了承してくれたのでお礼の蜂蜜のボトルを渡しておく。
モーニングをたべた後、部屋に戻り喫茶店の制服を着る銀次郎。
準備を済ませて待っていると、馬車がハングリーベアーの前に停まった。
急いで下に降りてセバスチャンに挨拶をする。
「おはようございます。今日も宜しくお願いします」
「ギンジロー様おはようございます。こちらこそ宜しくお願い致します」
馬車に揺られてお城に着くと、まず最初に向かったのはソフィアの部屋だ。
「ソフィアおはよう。今日は楽しいお茶会になるように頑張るからね」
「ありがとうギンジロー。お昼過ぎには来ると思うから、その前にお料理の準備始めるよ」
メイドのアメリーにエプロンを着させてもらい、一緒に厨房へと向かうソフィア。
「オリバー今日は宜しくね」
「おう坊主ヨロシクな」
親指を立ててニカっと笑う料理長のオリバー。
厨房のみんなにも挨拶を済ませて準備に取り掛かる。
お茶会で用意するのは、ソフィア手作りのサンドイッチとチーズフォンデュ。
ライナさんからもらった白ワインと、アイリスさんからもらったチーズで作るのが銀次郎なりのお返しだと考えている。
下準備をしていると、話を聞きつけたクーノさんが厨房へとやってきた。
「やぁギンジロー君。美味しそうなもの作ってるって聞いたから味見しに来たよ」
相変わらず自由なクーノさんだが、ソフィアには怒られていた。
ただお茶会に興味があるらしく、昨日のうちに今日の分の仕事は終わらせたからといって、この場を離れようとしない。
邪魔はしないでお兄ちゃんとソフィアは言っていたが、結局この場を離れることはなかったクーノさん。
文句を言いながらも味見をしてもらっていて、なんだかんだいって仲が良いなと思いつつ、下準備を進める銀次郎だった。
「クーノさん本当に今日はずっとこっちにいるんですか?」
下準備を終えて、ソフィアは部屋で待機をしていた。
銀次郎とセバスチャンそしてクーノさんの三人で、厨房の休憩スペースで至福のひと時を過ごす。
「少し苦いけど独特の香りがたまらない。それに飲む前の儀式みたいなのが面白いね」
セバスチャンが豆から挽いてコーヒーを淹れてくれたのだが、その工程が気に入ったようだ。
それぞれコーヒーを楽しみながら会話をしていると、万年筆の話になった。
「そう言えば、このあいだのペンって持ってきてくれた?」
「もちろん持ってきましたよ」
クーノさんは結構な値段で、万年筆を全て買い取ってくれた。
必要な時があればまた言ってくださいねと伝えると、また頼むねーとご機嫌なクーノさんだった。
「どうやらそろそろ着くみたいですね。お出迎えに行って参りますので、一度失礼致します」
セバスチャンがお出迎えに向かったので、身だしなみを整える銀次郎。
クーノさんはお酒が飲みたくなっちゃったなーとアピールしてくるが、それは無視して準備を進める銀次郎だった。
最初のお茶会を書いていた時の事を思い出しました。
あの頃は小説を書くのが初めてだったので、読んでくれる人なんているのかなと思っていましたが
いつの間にか100万PVを達成していました。
下手な文章ではありますが、読んでくれて皆様ありがとうございます!
まだまだ話は続きますので、これからも宜しくお願い致します。