第百二十一話 カミラ
「カミラは王都の商業ギルドに所属していて、学生時代からの付き合いなの」
ミリアの話によると飛び級で進学して周りが年上だった為、孤立していたミリアに手を差し伸べてくれたのがカミラさんだった。
手紙には美しい透明なガラス瓶に入った砂糖菓子は、どこで作られたのかを調べて欲しいと依頼がシュミット商会から来ているとの事だった。
「シュミット商会ってハリーが最初に行った所だっけ?」
「そうだよ。コンペートーを安く買い叩こうとしてたから断ったんだ。商業ギルドに問い合わせをするぐらいだったら、あの場で買い取れば良かったのにね」
確かにそうだなと思う銀次郎だったが、ゴールドランクの商会がわざわざ金平糖の問い合わせをする理由って何だろう。
「ミリアはどう思う?」
「そうですね。貴族に売って利益を出すかもしくはガラスの出どころを調べているのか。白い砂糖を調べているかもしれないですし、この情報だけでは何とも……」
考えても結論は出なかったので、ミリアには詳しい情報が分かればまた連絡して欲しいと手紙に書いてもらった。
「カミラさんに会った時にギンジローの紅茶を一緒に飲んだんだ。とっても気に入ってたから少し譲ってあげても良いかな?」
「紅茶くらいハリーの好きにしていいよ。それより手紙以外の荷物も送れるんだね」
手紙や荷物はマインツと王都の商業ギルドを結ぶ定期便馬車に載せることが出来るらしい。
もちろんこれは商業ギルドの定期便なので、一般的には商会に依頼するらしいのだが。
「それなら紅茶のカップもあった方が良いでしょ」
銀次郎はアイテムボックスから、新品のカップとソーサーのセットを取り出した。
割れるといけないので、プチプチでぐるぐる巻きにしておく。
「カミラ絶対に喜ぶと思う。また一緒に紅茶を飲みたいな」
よっぽど仲が良いのだろう。
紅茶はハリーに預けているので、また送る時はハリーにお願いしてねとミリアに伝えておいた。
「この後食事にでも行く?」
銀次郎はみんなで呑めると思っていたが、ハリーがモジモジしている。
ミリアは変わらぬ表情だったが、エミリアから空気を読めと言わんばかりの視線がきたので、ソウイエバヨウジガアッタナーと商業ギルドを再び後にする銀次郎だった。
こんな時はあの人だな。
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「マニーさんこんばんは」
「おぅギンジローどうした?」
マニーさんにマインツのお城での予行練習が決まった事を伝える銀次郎。
バンドの仲間達には声を掛けておくと言ってくれたマニーさんが、急に真剣な顔になる。
「リンダちゃんが歌っても良いよって言ってくれたんだ。あの曲を使っても良いか?」
あの曲とはガラスの靴の持ち主を探す王子様の物語の曲で、この間のエルヴィスナイトで歌った曲だった。
「別に良いですけどあの曲は泣かせる曲なので、女性が歌うなら明るい曲の方がいいと思いますけど」
「そうか? あの曲は良いと思うんだけどな」
マニーさんは納得が言っていない様子だったので、故郷で流行っていたアイドルグループの話をする。
「アイドルってのがよく分からねーな。明るい曲を歌って踊って男を夢中にさせるって」
マニーさんが夢中になっているのはリンダさんなので、お客さんにはそれぞれの推しを見つけてもらう事。
その為には様々な個性が集まっている集団の方が良いと言う事を伝える。
アイドルについて説明を一生懸命していると、マニーさんが急に肩に手を回してきた。
「とりあえずいこっか?」
笑顔のマニーさんに連れられて、マリアさんのお店に行く二人だった。
「いらっしゃいませマニー様、ギンジロー様」
支配人さんの挨拶には品がある。
当然の如く一番奥のVIP席に通されるが、このお店のエールは一杯銀貨5枚もする。
マニーさんは楽器店を経営しているし、独身だからある程度はお金が使えるけどこのお店でVIP席は心配だ。
銀次郎はお手洗いに行くフリをして支配人さんに声を掛ける。
「マニーさんが支払いをすると思うんですけど、女の子の分のお酒とかは私が後で支払うので、マニーさんには安く請求して貰っても良いですか?」
支配人さんにお願いをして席に戻ろうとすると、マリアさんがお手洗い前で出迎えてくれた。
艶やかな赤色のドレスの胸元には、パワーストーンのネックレスが乗っている。
微笑むマリアさんに目線を逸らす銀次郎。
席に戻るとマニーさんの横には、これまたグラマラスボディのリンダさんが座っていた。
もちろんマニーさんの右側に座っており、左手はマニーさんの右手に添えられている。
「リンダちゃんなに呑む?」
「リンダはマニーさんと一緒がいいな」
「ふっ俺はエールだ。ギンジローは?」
「ボクもエールをお願いします。マリアさんは?」
「私もエールを頂けるかしら」
グラスが運ばれて来たので、マニーさんに音頭を取ってもらう。
「プロージット」