第十話 白髪さんからお手紙着いた
お茶会を抜け出し、別室で休憩中の銀次郎。
正しくはお嬢様方だけで少し話をしたいと言う事なので、終わるまで別室で待機している。
執事のセバスチャンとコーヒーを飲んでいると、さっき号泣していたアイリス様の執事スチュアートさんが近づいてきた。
「この様な素晴らしいお茶会は初めてです。私は今猛烈に感動をしております。何か私に出来る事があれば、なんなりと申し付け下さいませ」
そう言って白髪の老人が握手を求めてきたので、銀次郎はまた握手をする。
「これ渡しときますね」
銀次郎はさっき撮ったアイリス様との写真を渡す。
これは…… とだけ言い、固まってしまった白髪の執事スチュワートさん。
よっぽど嬉しいのか、また涙を流している
「何度かこの様なお祝いをした事がありますが、今回が一番良かったです。人を喜ばせる事って、こんなに感動するんですね」
さっきの事を思い出しスチュアートさんと話していると、ふと銀次郎にアイディアが閃く。
「ひとつご協力をお願いしても宜しいでしょうか?」
もう何回も握手をしている仲だが、今度は初めて銀次郎から求めた握手をする二人だった。
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チリーン♪
しばらくするとメイドのアメリーから、お嬢様方の話が終わった事、新しい紅茶を淹れて欲しい事。
そして誕生日プレゼントの準備をお願いされた。
銀次郎は手を洗い、身なりを確認してから部屋に入る。
アイリス様の見えない位置に、誕生日プレゼントを置いた後、紅茶を淹れ直す。
それぞれ三人の目の前に置かれていたお皿を、少し大きめのお皿に変更し交換。
「アイリスには誕生日の、ライナには日頃の感謝の気持ちを込めてプレゼントがあるの」
銀次郎はすぐさまソフィアにプレゼントを渡す。
実は化粧品セットの方は使い方が分からなかったので、基礎化粧品のセットだけをプレゼントする事になった。
「素敵なガラスね。透き通っていて中身が見えるわ」
化粧品を取り出して眺めるライナ様。
どことなくだがライナ様は、医者が江戸時代にタイムスリップするドラマの、ペニシリンに情熱を注いだ女優さんに似ているなぁ。
そんなどうでも良い事を考えながら見ていると
「これはね〜 女性の人生を変える物らしいの。コーエンから話をしてもらうね」
ドヤ顔のソフィアからバトンを受け継いだコーエンさん。
基礎化粧品の使い方を、実践しながら説明していく。
銀次郎から聞いた知識と、自分が経験した事を織り交ぜての説明は、二人の心に響いたようだ。
コーエンさんがこの化粧品は革命だみたいな事を言っている。
なんか話が変な方向に行ってしまったので、お茶会を良い形で終わらせるように銀次郎は仕掛けを放つ。
本日の主役であるアイリス様のお皿をさりげなく下げると、お皿があった場所から手紙が現れる。
銀次郎は何も言わず、お辞儀をして一歩下がった。
これはソフィアもセバスチャンも知らないサプライズだ。
「これ…… 読めばいいの? えっと……」
手紙を読み始めるアイリス様。
実は白髪の執事スチュアートさんに、さっき手紙を書いて貰っていたのだ。
完全なる銀次郎の思いつきだが、どうやら上手く行ったみたいだ。
アイリス様の頬には、再び涙が流れる。
目線を隣にやると、白髪の執事スチュアートさんはまたしても号泣。
この人はすぐ泣くなと考えていると、見慣れた手が出てきたので、銀次郎も同じ様に手を差し出すのであった。