第百十話 サンドイッチパーティー
以前オリバーに教えて作ったのは、ハムとレタスの王道サンドイッチとタマゴサンドだ。
今回はそれを進化させてみよう。
「まずはマヨネーズを作ります。あの白いソースを覚えていますか?」
前に厨房でサンドイッチを作った時は、市販のマヨネーズを使った。
だが今回はせっかくなのでマヨネーズを作る事にしたのだ。
喫茶店をやってた時は、マヨネーズもタルタルソースも自家製だったからね。
マヨネーズと生クリームを作る用に調理器具を購入しておいたので、アイテムボックスから取り出して水洗いをしてもらう。
「使うのは玉子の黄身と塩とお酢。あとは油です」
玉子は生で使うので、一応クリーンの魔法をかけてみる。
黄身と卵白を分けてから黄身に塩とお酢を入れた後、油を少しずつ加えながら手動のフードプロセッサーを回す。
するといい感じに固まってきたので、味見をするとフレッシュなマヨネーズでおいしかった。
「坊主、このマヨネーズは簡単に作れるんだな。今度作ってもいいか?」
オリバーが聞いてきたので、手動のフードプロセッサーをあげる事にした。
玉子を生で使うので、クリーンの魔法を保険でかける事。
マヨネーズを作ってお腹を壊したらいけないので、マインツ家の料理人達以外には教えないで欲しいと伝える。
余った卵白でシフォンケーキを作るかな。
砂糖を入れて若い料理人にハンドミキサーを渡し、メレンゲを作ってもらう。
さて次はツナサンドだな。
ツナといっても、マグロじゃなくて鳥のササミで代用するけど。
茹でた鳥の胸肉とササミを冷ませて、手動のフードチョッパーを回す。
そこにマヨネーズを混ぜてツナの完成だ。
次は大好きなタマゴサンドを作るよ〜
この辺りからメイドの方々も様子を見に厨房に集まり出した。
メイドのアメリーはさっきまでいなかったのに、いつの間にかソフィアの後ろで待機している。
抜け目がないなと思いつつ、茹で卵を作っていく。
「玉子をたくさん使うんだな」
異世界では玉子の値段が高い。
養鶏場に交渉をしたので安くなる目処はたったが、まだ建物を増築している最中だ。
玉子が安く手に入るようになったら、本格的にお菓子作りも進めていきたいので、進捗を確認しに行こうと考える銀次郎だった。
「茹で卵は黄身と白身を分けます。黄身をフォークで潰して、白身は細かく切っていきます」
若い料理人達に手伝ってもらい、クレイジーなソルトで味を整えてマヨネーズを大量投入。
アメリーに味見をしてもらうが、表情を見るだけでおいしいのがわかった。
もっとたべたそうにしてきたが、あと他にもサンドイッチを作るので待っててもらう。
先ほどお願いしたメレンゲが完成したので、小麦粉を振って牛乳と油を混ぜて生地を作る。
喫茶店で使っていた型に生地を入れて、オーブンで焼き上げてもらう。
卵白で作るシフォンケーキはあっさりとしていて、個人的には大好きだ。
この頃になるとメイド以外の方々も厨房に集まってきた。
これはサンドイッチが足りなくなるなと感じた銀次郎は、若い料理人達に追加のマヨネーズとツナ、タマゴを追加で作ってもらう。
セバスチャンとアメリーには、紅茶の用意もお願いした。
「後は王道のハムとレタスのサンドイッチですが、レタスはひと工夫してみましょう」
沸騰させたお湯と同じ量の水を入れて、五十度の湯を作る。
そこにレタスを入れて洗うと、新鮮なレタスだったが更に色艶がよくなった。
オリバーに五十度洗いを説明すると、そんな技もあるんだなと感心していた。
具材は完成したので、手の空いている料理人達にサンドイッチを作り始めてもらう。
その間に銀次郎はホットサンドを作り始める。
具材はタマゴとチーズをたっぷり入れたのと、ハムとチーズたっぷりにした。
基本チーズを入れれば何でもおいしくなる。
ただホットサンドのフライパンは一つしか持っていなかったので、今度ネットショップで買っておこう。
「紅茶のご用意が出来ました。皆さん一息入れてください」
セバスチャンとアメリーが入れてくれた紅茶を飲みながら、料理人と厨房に集まっていたメイドや従者の方々と一緒にサンドイッチパーティーを始めるのであった。
「失礼致します。どうしてもソフィア様にお聞きしたい事があるのですが、宜しいでしょうか?」
「大丈夫よ。どうしたの?」
シフォンケーキを食べて表情を緩ませているソフィアに、メイドの一人が質問をする。
「あちらにいらっしゃるギンジロー様とは、どのようなご関係なのでしょうか? 我々メイドがソフィア様に直接聞くなんて、本来は許されない行為だとは理解しております。ただソフィア様の幸せそうなそのお顔を見ると、何か我々に出来る事はないかと思いまして」
「んーありがと。ギンジローは大切な人よ。あなたは大切な人っているの?」
なんかソフィア楽しそうだな。
銀次郎はソフィアとメイド達が集まっているテーブルを見て、微笑ましく思うのであった。
「ギンジローさん。アルミホイルで包んで蒸したマインツハンバーグなんですが、味を確かめてもらえませんか?」
若い料理人が、さっそくアルミホイルを使ってハンバーグを作ってきた。
「ナイフとフォークを貸して」
銀次郎は膨らんだアルミホイルにナイフを入れる。
すると切れ目から蒸気が溢れ出し、良い香りがしてきた。
「味は問題ないかな。表面のアルミホイルはシワを作らないように包む事が大切だよ。ナイフを入れる作業ってたべる側からしたら楽しいんだよね。あとは付け合わせを一つ教えるよ」
銀次郎はニンジンを手に取り、花の形に切っていく。
マインツハンバーグとソースの茶色に、アスパラとブロッコリーの緑色。
そしてニンジンで作る鮮やかな花の色。
お花畑をこのアルミホイルの中で作るイメージを伝える。
「勉強になりました、ありがとうございます。この間街の食堂の店主に美味しいマインツハンバーグの作り方を教えてくれって言われたんですけど、このアルミホイルのマインツハンバーグを教えてもいいですか?」
もちろんだと伝え、明日アルミホイルをたくさん持ってくることを約束する。
街の食堂だと、子供が蒸気で火傷をする可能性がある。
子供に提供する際は火傷をしないようにこっちでアルミホイルを破るか、気をつけるように必ず伝える事も忘れずにね。
ハンバーグで街おこしを始めたが、マインツ家の料理人達には本当に助けてもらっている。
計算していなかった化学反応も生まれて、うまく進んでいるなと実感したのであった。
「坊主、まだあの白くてふわふわなパンはあるか? 奥様に味を確かめてもらいたいんだが」
ネットショップで食材は大量に買ってあるので、食パンはまだまだある事を伝える。
銀次郎は食パンをオリバーに渡して、サプライズの計画を進めていく為ソフィアの部屋に戻るのであった。
いつも誤字・脱字報告ありがとうございます。
とても助かっています。