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異世界ネットショップマスター  作者: グランクリュ
第二章 ダンスホール編
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第百三話 エカード司祭の悩み

誤字・脱字報告いつも助かっています。ありがとうございます。

 教会の馬車に揺られてたどり着いた先は、見慣れた場所であるマインツのお城だった。

応接室に通されて暫く待っていると扉が開いた。



「ヴェルナー司祭には、ギンジローさんにちょっかいを出さないようにお伝えしたはずですけど」



 応接室に入ってくるなり、虎がヴェルナー司祭にジャブを放つ。



「ギンジロー殿とたまたま会ってな」



 虎とヴェルナー司祭は昔からの知り合いだと思うのだが、部屋には緊張感が漂っている。

これからどんな話があるのか身構える銀次郎だった。



「なに単純な話じゃ。メガネをエカード司祭に譲って欲しいのじゃよ。私と同じく目が悪くてのぅ。引退を考えておったからメガネがあればと思ってな」



 偉い人だとは思ってたけど、エカードさんも司祭なんだ。

まぁそのくらいの年齢になれば、目は衰えてくるよね。



「ギンジローさんはこの話を聞いていたのかしら?」



「いや、今初めて知りました。たまたま仕事の手伝いでマインツの大聖堂に行って、ヴェルナー司祭と会ってこちらに連れてこられたので」



「ふーんなるほどね。コーエン、メガネを持ってきて」



 コーエンさんが眼鏡を持って来て机の上に並べると、ヴェルナー司祭がエカード司祭にメガネを勧める。



「ギンジローさんは一人なの。メガネの件はギンジローさんから私に任されているので、今度から直接話を持ってきて下さい。次はないですからね」



「ギンジロー殿の事が大切なのはわかるが、この国にとってエカード司祭が引退したら損失だとは思わんかね?」



 虎がヴェルナー司祭に向かって、相変わらずタヌキねと呟く。

失礼な言葉ではあるが、ヴェルナー司祭もエカード司祭も笑っているので問題はないのだろう。

むしろ仲が良いのかな? ちょっと分からないが聞く勇気はないのでこのままスルーする。



「エルザ夫人、ギンジロー殿申し訳ない。ここ数年目が悪くて、引退しようかヴェルナー司祭に相談したのじゃよ。そうしたら良いものがあると教えてくれてな。悪気があったわけではないが、迷惑をかけた事は謝罪する」



「謝罪は受け入れましたがこれは借しですよ。とにかくギンジローさんにこれからも直接話がいって、困らせる事のないようにして下さいね」



 虎がヴェルナー司祭に釘を刺したところで、エカード司祭に合うメガネを探す事になった。



「長年気がつかなかったが、物が見えるというのはこれ程までに素晴らしい事なんですな。また一つ学ぶ事が出来た」



 老眼鏡が気に入った様子のエカード司祭。

予備の老眼鏡も選んでもらって、メガネ拭きも渡す。



「これでエカード司祭の引退は無くなったのですよね? お金は受け取りませんよ。もしこのギンジローさんが王都で困った事があれば、きっちりこの借しを返して下さい。それまで引退せず教会にいて下さいね」



「これは手厳しい。だがこのエカード約束は守る。困った事があればいつでも訪ねて来てほしい。本当にありがとう」



 エカード司祭が右手を差し出してきたので、銀次郎も慌てて右手を出し握手をする。



「コーエン、お客様がお帰りだからお見送りを。ギンジローさんはこのまま残ってね」



 いや〜私も帰りたいんですけど……

ヴェルナー司祭とレイノルド助祭とも握手をして、別れる銀次郎だった。




●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●●




「あのタヌキには気をつけてよ」



 教会には大きな権力があり、強烈な縦社会である。

そこで司祭まで上り詰めるのには、それなりの理由がある。

聖職者であっても、表には見えてこない部分はある。

私の目が行き届く範囲なら守れるが、そうでない場合は守りきれない。

気をつけて行動するように虎からアドバイスされる。



 ヴェルナー司祭も一緒にいたエカード司祭も悪い人とは思えないが、銀次郎自身が信頼しているのは目の前の女性だ。

きっと心配してくれているのだろう。



「そういえば、ウチのパパがお願いしたい事あるらしいからこっち来て」



 銀次郎がついていくと、厨房へと案内されるのだった。



「いや〜急に悪いね。来てるって聞いたから手伝って欲しくて。でもこの厨房に入るのはいつ以来だろう。懐かしいなぁ」



 何だか全く分からないので話を聞くと、この間作ったマインツハンバーグを王都に戻ってもたべたいそうだ。

レシピは渡しているが、お城の料理人を何名か連れていく事を決めたのだそうだ。



「本当は料理長を連れて行こうとしたのだけど、ウチのが許してくれなかったのさ。だから君に人選を任せたくて」



 急な展開が続き振り回される銀次郎だが、料理人達の目は真剣だった。

王都の屋敷に連れて行かれる事は名誉な事だと聞かされたので、いつもお世話になっている料理人の為に手伝う事を決めたのであった。

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