第百話 幸運を呼ぶネックレス
強い陽の光で自然と目が覚める。
昔は目覚ましで強制的に起こされていたのだが、今はそのストレスが無いのが嬉しい。
でも木製のベッドは身体が固くなるんだよな〜
背筋を伸ばして身体の硬さを消していく銀次郎。
今日はモーニングの前に、部屋でネットショッピングだ。
野良猫のアオに焼津産のカツオを使った猫缶を購入。
猫の手ではフタが開けられないので、銀次郎が開けてからアイテムボックスに入れておく。
「ん……幸運を呼ぶネックレス? このネックレスをつけただけで、宝くじが当たって彼女もできましたって」
怪しいけど銀貨3枚なので買ってみる。
短めの金色のチェーンにちっちゃい龍のネックレス。
金色だけどもちろん金ではない。
幸運を呼ぶネックレスをつけてみたら、なんとなく神秘的なパワーを感じる……ような気がしないでもない。
そんな事を考えてると、部屋にエデルが訪ねてきた。
急いでネックレスを外しいつもの様に板氷を渡すと、出来の良いイチゴが安く手に入ったらしく分けてくれた。
「エデルこんなにいっぱいありがとう。甘い香りで艶々していて美味しそうだね」
エデルに感謝の気持ちを伝えると、ヴェリーヌさんの果実水の店の話になった。
「ヴェリーヌさんのお店、果物の仕入れが増えたんですよ。僕も果実水に合う果物が分かってきたので楽しいです。それで相談なんですけど、他の果実水屋さんからこっちにも同じ果物を売ってくれと声をかけられたのですが、どうしたら良いと思いますか?」
商売は順調そうだけど、これはエデルの問題だ。
「エデルはどうしたいの?」
「僕は……ヴェリーヌさんやエミリアお姉さんを裏切る様な事はしたくないので、断ろうかなと思ってます」
銀次郎はエデルの頭を撫でる。
商会長として自分が大切なものは何か考え、行動する様にと伝える、
しかしいつの間にかエミリアお姉さんときたか。
あの受付の娘頑張ってんのかな?
銀次郎はエデルとモーニングをたべた後、ヴェリーヌさんのお店に行く事にしたのであった。
「やっとお店にきた…… オトクヨウチョコレート」
ヴェリーヌさんのお店は相変わらず繁盛しているが、知らない顔の女性が二人いた。
取り敢えず挨拶をするが、みんな忙しそうだ。
ヴェリーヌさんに一言伝えて、洗い物を手伝う事にする。
「はちみつレモン頂戴!」
「この水筒に果実水と、はちみつレモンも入れて」
「おすすめの果実水お願い」
「今日もうめぇーなぁ。これ飲んだら仕事に戻るか」
銀次郎はお客さん達の声を聞きながら、積み上げられたカップをひたすらに洗い続けるのであった。
「ヴェリーヌさんお疲れ様です。お店すごかったですね」
果実水が完売したので、お昼前だがお店を閉めるヴェリーヌさん。
「ギンジローさん、手伝ってくれてありがとうございました。彼女はベティーで、こっちの彼女はカロリーナ。二人とも私の昔からの友達なの」
ベティーさんもカロリーナさんも共に結婚をしていて、子供もいる。
たまたま二人でお店に来た時、ヴェリーヌさんの友達だと知って受付の娘が声をかけたらしい。
二人とも子供が生まれてから、仕事は全くしていなかった。
それがヴェリーヌのお店を手伝って欲しいと言われた時は少し悩んだが、昔から仲良かったヴェリーヌのお店だったので、誘いを受ける事にしたのだ。
仕事のブランクはあったけど、すぐに馴染む事ができた。
「オトクヨウチョコレート……」
疲労の色が見える受付の娘にチョコをあげる。
手伝いに来ていた二人は家に戻らないといけないので、子供達の分も含めてチョコを多めに渡しておいた。
「ギンジローさん、エミリアから聞きました?」
何も聞いていなかったが、どうやらすぐそこの場所に新しいお店を作るそうだ。
「お店を広げるべきだとエミリアが提案してくれたの。ここは狭いお店で古かったし、売上も従業員も増えたからやってみようかなと」
ヴェリーヌさんには、私にも出来る事があればお手伝いしますと伝えて、受付の娘と店を後にし商業ギルドへと向かうのであった。