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異世界ネットショップマスター  作者: グランクリュ
第二章 ダンスホール編
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第九十六話 ほっぺにチュー

 レイチェルさんのダンスホールで、マニーさんのバンドと顔合わせをしてから四日が経った。

基本はエデルの納品を手伝ったり、エルヴィスとドレスの納品の日々だが、マニーさんと会う機会も増えた。



 マニーさんはバンドメンバーと話をして、アイドルの曲を作る事と演奏をするところまでは進んだ。

プロデューサーはマニーさんなので、小屋が見つかったら一緒に人材を探しましょうと伝える。




 社交ダンスの発表会の方は、参加者のカップルに一度マインツ家のお城に集まってもらって合同練習を行う。

運営側としては初めての事なので見えていない部分もあると思うが、一度合同練習をして問題の洗い出しをしよう。

ハンバーグでの街おこしの方は順調だ。

マインツハンバーグを自分の店でも作りたいと申し出が増えているので、今度またハングリーベアーでマインツハンバーグの作り方を教える事になった。



 教えるのは簡単なのだが、銀次郎の一番の悩みは明日の事だ。

虎の旦那さんというか、ソフィアのお父さんというか、マインツの領主というか、マインツ伯爵家の当主と明日初めて会うのだ。



 夕食にマインツハンバーグを作ってたべてもらう。

ただそれだけの事なんだけど緊張するな。




「ギンジロー ねぇギンジロー」



 ソフィアが銀次郎の袖を引っ張る。



「あぁごめん。ちょっと考え事をしてた」



 今日は養鶏場で増産と値下げの交渉をする為、ソフィアと馬車で向かっている最中だった。



「なに考えてたの?」



 少し拗ねた様子のソフィアだが、久しぶりの外出で気分が良いみたいだ。



「明日ソフィアのお父さんと初めて会うから、緊張してるんだよ」



「そんなの緊張しなくても大丈夫だよ。別に怖くないし、お母さんにいつも怒られてるお父さんだから」



 やはり虎の尻に敷かれてるのか。

もしソフィアと結婚したら、俺も尻に敷かれるのかなと妄想する銀次郎。



「ソフィア様、ギンジロー様着きました」



 セバスチャンが馬車を養鶏場の前に停める。

メイドのアメリーが馬車を降りて、養鶏場の人を呼びに行ってくれた。



「ギンジロー行こうよ」



 後で聞いた話だが、本来ならソフィアは領主の娘で貴族なので、馬車まで迎えに来させるのが普通らしい。

ただソフィアはそういった決まりを気にしないというか、好きではないので銀次郎を連れて養鶏場の入り口まで歩いていく。



「申し訳ございませんお嬢様。こんなところにわざわざ来ていただいて」



 アメリーに話を聞いた養鶏場のご夫婦が、急いで外に出てきた。



「急に来たのは私達ですので、どうかお気になさらず。隣にいるのが代理人のギンジローさんです。少しお時間をいただけますか?」



 ソフィアから紹介されたが、目の前のご夫婦は恐縮していた。

私は貴族じゃないし偉くもないので、そんなかしこまらないで下さいと伝える。



●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●●



「それでは養鶏場を広げる為に土地や建物の購入。鶏を増やすのも、街まで運ぶのも、マインツ家でやってくれるという事でしょうか?」



「正確にはマインツ家が依頼する商会にやってもらいますが、必要なお金は全て出します。玉子も全てこちらで購入するので、価格を下げてもらいたいです」



 養鶏場のご夫婦に話をすると、領主様の依頼でお金を全て出してくれる。

鶏は基本放し飼いで、夕方になると小屋に戻すだけだ。

元々は食用の鶏を育てているので、そこまでしてくれるのであればと了承してくれた。

今は玉子を一個銅貨5枚で買い取っているが、増産が出来たら値段を下げて行く形で話がまとまる。



「ありがとうございました。また来ますのでよろしくお願い致します」



 養鶏場のご夫婦と別れて馬車へ戻った。



「ギンジロー良かったね」



 ソフィアが笑顔で言ってくれるが、お金を出してくれるのはマインツ家だ。



「うん。話がまとまったし、ソフィアの笑顔が見れて良かったよ」



 思った事を言っただけだが、なんだか恥ずかしくなった。



「ギンジロー嬉しいよ」



 また袖を引っ張るソフィアを見て、この時間がいつまでも続けば良いのにと思う銀次郎だった。



●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●● ●●



「お婆さんこんにちは。急に来てすみません」



 銀次郎とソフィアは野菜のお婆さんの家に行った。



「ギンジローけ。馬車なんかで来てどうした? 別嬪さんも連れてくるなんて結婚するんか」



 お婆さんは元気だなと思いつつ、まだ結婚じゃないですよと伝える。



「まだねぇ。イッヒッヒ」



 お婆さんが不気味に笑うが、銀次郎もソフィアも顔が真っ赤になる。

そんなつもりではなかったのだが、どうしてそんな事を言ってしまったのだろうか。

この話を誤魔化すように、銀次郎は今日来た事を話す。



「お婆さんの畑で育ててるジャガイモ、買いたいんですけど」



「ジャガイモけ? 欲しいなら自分で採って持っていけば良いじゃろ」



 お婆さんは畑を指差すが、畑のジャガイモを全部お金を払って買いたいと伝える。



「ほえぇ。ウチは助かるが本当に良いんかぇ」



 息子さんご夫婦も交えてお金の話をする。

お婆さんに無理していないかと聞かれるが、銀次郎はジャガイモの在庫を持っておきたかった。

ハンバーグの付け合わせにフライドポテトは欠かせない。

フライドポテトは前にマインツ家の厨房で作ったのと、ハングリーベアーでルッツに教えただけだが作り方自体は簡単だ。



 塩が高いのでフライドポテト単品では出していないが、マインツハンバーグの付け合わせで油で揚げたポテトを出しているお店はある。

ジャガイモが品薄になる可能性があるので、今のうちに買っておきたいと思ったのだ。

結局全部売ってくれる事になり、もっと欲しいと言った銀次郎の申し出に、知り合いの農家に声をかけてくれる事になった。



「あとは前にも言いましたが、サツマイモも育ったら全部売ってください。お願いします」



 お婆さんは見ないうちに男らしくなったのうと言って、ほっぺにチューをする。



「なにやってんですか。やめてくださいよ」



 銀次郎はおばあさんと離れようとするが、頬を合わせてスリスリされる。

なんとかしてお婆さんと離れると、さっきまで笑顔だったソフィアが冷たい目をしている。



 なんでこうなった……

帰りの馬車では会話もなく、とても長い時間に感じる銀次郎だった。

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