閑話 エミリアとオトクヨウチョコレート バレンタイン特別編
「お腹減った。甘いのが食べたい」
ヴェリーヌさんのお店で休む暇なく働いた。
この辺りは市場があり、商会や問屋が多い。
朝早くから働いている人が多く、一つ目の鐘が鳴る頃にやっと休憩になったお客さんが、怒涛のようにヴェリーヌさんのお店に訪れる。
「昨日勧められて美味しかったレモンの甘いやつ頂戴。あと仕事中にも飲むからこっちの水筒にも入れて」
「んーすっぺぇ。このはちみつレモンって奴すっぱ甘くてうめぇな」
「すみません。この壺に果実水とはちみつレモンという物を入れてもらえますか? 持ち帰りますので」
「お客さんが来たから紅茶をもらいたいんだけど大丈夫かな?」
「なんでこんな混んでんだよ!ヴェリーヌさんに話しも出来ずに休憩が終わっちまうじゃねーか」
「君が作る果実水じゃなくて、ヴェリーヌさんに作ってもらいたいんだけど」
忙しいだけなら大丈夫だけど、なんで怒られないといけないのだろうか?
ここはヴェリーヌさんの果実水のお店。
はちみつレモンの可能性を知る為に、お店を手伝ったはずなのに……
私の思った通り、はちみつレモンはよく売れた。
リピーターのお客さんの他に、口コミで初めてのお客さんもいっぱい来た。
売上は上がったけど何故だか怒られる。
泣きそうになった時にミリア先輩とギンジローが店に来た。
嬉しかった…… 甘えたかった……
お菓子王子の顔を見たら、甘いのが食べたくなった。
甘いのが食べたいって言ったら、オトクヨウチョコレートって黒いお菓子をくれた。
理由はわからないけど幸せな気持ちになれた。
お菓子王子に甘えたくて、でも困らせたくて、もっとちょうだいと無理を言った。
お菓子王子は困った顔をしたけど、すぐに同じオトクヨウチョコレートをたくさんくれた。
次の日、この幸せな気持ちをお裾分けしたくてオトクヨウチョコレートをお客さんに配った。
昨日すごく怒ってたお客さんも、悪かったなと謝ってくれた。
このオトクヨウチョコレートって不思議だな。
みんなを笑顔にするオトクヨウチョコレート。