第九十話 鉄板焼きハンバーグのアイテム
陽の光で自然と目覚めた銀次郎。
開けっぱなしにしている木の窓からは、心地よい風が入ってきていた。
さて今日も頑張りますかね〜
いつも通り庭に出て、井戸水を頭からかぶってシャキッとさせる。
今日はエルヴィスの納品に付き添うので、部屋に戻って身だしなみを整えた。
「ギンジローちゃんおはよー。エデル君待ってるよー」
今日もクラーラさんの笑顔に癒される。
いつもの席に座りエデルの相談を受けながら、一緒にモーニングをするが、ハリーが居ない事に少し寂しさを覚えるのであった。
エデルと別れた後は大通りを歩きエルヴィスの店へ。
今日は仮縫いの合わせと本納品があるので、ジャケットを着ている。
ソフィアから貰ったハンカチをポケットチーフにして、オシャレ感を演出してみた銀次郎であった。
「よぉギンジロー。今日も頼むな」
エルヴィスとハグで挨拶をした後、こっちの方が似合ってるぞと言われたので、何かと思ったらいつの間にかシャツが第三ボタンまで外されていた。
目の前のワイルド金髪イケメンは笑っていたが、もう何回もボタンを外されている銀次郎は呆れるしかなかった。
今日は二つ目の鐘がなる前に、最初の仮縫い合わせを済ませた二人。
ドレスが待ち遠しかったみたいで、とっても喜んでくれた。
社交ダンスの発表会がマインツのお城で開催される事になり、チケットを追加購入したらしい。
何か不安な事がないか聞いたら、ダンスホールで一度踊って感覚を掴みたいとの事だった。
考えれば当たり前の事だが、そこまで手が回っていない事に気づく。
レイチェルさんとミリアに、他にも何か声が上がっていないか確認しないとな。
順調に仮縫い合わせとドレスの本納品が進み、最後は木材商会のカールさん夫婦の所へ。
商会の前には馬車が何台も停まっており、木材の積み込みが行われていた。
二代目の息子さんがいたので挨拶をするが、なんだかトラブル中のようだ。
「これはうちの木材じゃねーぞ。安いからって変な商会から買うからこうなるんだ。仕方ねーな」
二代目は鉋で木材の表面を磨いて、相手に木材を渡す。
自分の所で買った木材ではないのに、頼ってきた相手にお金を取らず解決してあげる。
それが良いのか悪いのか銀次郎には分からないが、親分肌な二代目は嫌いじゃないな。
「悪りぃなこんなところ見せて」
二代目が謝るが、銀次郎は鉋で削った木に目がいった。
「これって買う事出来ますか?」
銀次郎は削った木を手に取り、真面目な顔で聞く。
鉄板焼きハンバーグの油とソース跳ね防止の紙。それの代替品に鉋で削り出した木がピッタリだった。
「ちょっと待て、こんなので金は取れねぇよ」
二代目はそう言うが、異世界で紙の代用品になるのはこれしかないだろう。
纏まった数が欲しいと詰め寄る銀次郎。
「ギンジローさんどうしましたか?」
この場に現れたのは先代の商会長カールさんだった。
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「なるほど。ギンジローさんはこれが必要だと」
エルヴィスは、奥様のレーアさんのドレスの本納品を済ませて隣で紅茶を飲んでいる。
今は銀次郎が、カールさんと二代目の息子さんに交渉をしている最中だ。
「私も息子もこれを売って欲しいと言われても、今まで売り物とは思っていなかったからねぇ」
木材商会としたらコレはゴミだろう。
しかし銀次郎からしたら、鉄板焼きハンバーグの油とソース跳ね防止の紙にピッタリだ。
「ギンジローさんが必要なら売ってあげたら?」
奥様のレーアさんが助け舟を出してくれた。
だが男性陣は職人でもあり、削り出した木はゴミなので、それを売るのは気が引けると。
ただこれがマインツの街を盛り上げる物であり、領主から依頼を受けていることを伝えて説得をする。
「今からやるから少し待っててくれや」
息子さんも渋々納得してくれたので交渉成立だ。
助け舟を出してくれたレーアさんに、大好物のパウンドケーキをお礼として渡す。
「うちのバカ息子がごめんなさいね」
「なんだよ母ちゃん」
さっきは親分肌だなと思った二代目だが、母親の前ではまだまだ子供の様だった。
ただ、母ちゃんの好きなケーキがもらえるなら、喜んでやるよと言ってくれた。
試作品として厚みと幅を何パターンか変えたのを作ってもらい、実際に使ってみてどれが良いか決める事になった。
「ありがとうございます。これ妊娠中の奥様も好きだったと思うので一緒にたべてください」
銀次郎は息子さんにもパウンドケーキを渡して、握手をして別れるのであった。
最近はなかなか更新出来なくてすみません。
ゆっくりではありますが、可能な限り更新をしていきたいと思いますので宜しくお願い致します。