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閑話 メイド長の想い
裕福な家庭じゃなかったから、小さい時からメイドとして働いたの。
とにかく働かないと生きていけなかったから。
この仕事で一生働く為に、スキルと教養を身につけた。
奥様に認められてメイド長になった時は嬉しかった。
何度が縁談の話があったみたいだけど、お断りさせてもらったの。
だって…… 想い人がいるんだもん。
同じマインツ伯爵家で働く、料理長のオリバー。
私が見習いのメイドとして働き始めた時、オリバーは既に厨房で働いていた。
オリバーってすごく優しいの。
仕事で失敗して裏庭で泣いている時、声を掛けてくれた。
その日の賄いには、私の好きなフルーツをこっそり渡してくれた。
「これでも食って元気出せや」
この言葉と笑顔に、私の心は撃ち抜かれたの。
でもオリバーを見ているうちに気付いたの。
私の事女性として見ていないって……
お化粧して綺麗になって…… オリバーに私を女性として見てほしい……




