僕の幼馴染の学名はゴリラ・ゴリラ・ゴリラ
これタイトル詐欺じゃね?って思いました。
とりあえず読んで判断してみてください。
みなさんゴリラという生物を知っているだろうか?
地球上最大の類人猿でアフリカの中西部の森林に生息し、比較的おとなしい性格だが興奮すると後ろ脚で立ち上がり、両腕で胸を叩きながら吠えるあのゴリラである。
動物園などで一度は見たことがあるのではないだろうか?
さてそんな有名な動物、ゴリラには正式名称、すなわち学名があることはご存知だろうか。
我ら人間の学名がホモ・サピエンスであるように愛らしいイヌの学名がカニス・ルプス・ファミリアリスであるようにもちろんあんな強靭な肉体をもったゴリラにだって学名は存在する。
ずばりその名はゴリラ・ゴリラ・ゴリラである。
◇◇◇◇◇
「いってきまーす」
「亮くんいってらっしゃーい」
高校指定のローファーを履き、玄関を開ける。
今日から高校2年生。
そんな僕を祝うかのように太陽も僕を照らしてくれる。
・・・・・・・いや、少し照らしすぎなんだけどね?
むしろ暑いけどね?
でもこういうこともあろうかと日焼け止めを塗っているのだ!
フハハハハ!!!
紫外線よ恐れ入ったか!
紫外線対策もばっちりなことだし元気に登校だ!!
そう意気込んで歩いていると周りのところどころからひそひそと声が聞こえる。
『ねぇあの人めちゃくちゃ可愛くない!?』
『それな!!もうまんま女子だよね!ていうか実は女子なのでは?』
『なんかめっちゃ守ってあげたくなるよね!!』
『女子なのにあの人の方が可愛いってどういうこと?』
ふむ。
僕の近くに可愛い子でもいるんだろうか。
まぁ僕でないことは確かだ。
なんたって僕は男のなかの漢だからね!!!
最近なんて腹筋が連続10回できるようになったし!!
もはや最強の漢といっても過言じゃないね!!
僕が胸を張ってドヤァとしていると後方から大きな声が聞こえてくる。
こ、この声は!!
「亮くぅ~ん!!」
バッと振り向くとバナナを口に咥えた女子が右手をぶんぶんと降りながらこっちに近づいてくる。
「ま、まって。莉羅ちゃん、今日はよして、、、グフォ!!!」
そのまま両手で体を彼女に包み込まれる。
それだけならいいのだ。
美少女に抱きしめられる。
それだけで十分じゃないか。
でも現実はそう甘くはない。
抱きしめる力が強くなるにつれ、僕の体中の骨が悲鳴を上げ始める。
「ちょ、り、莉羅ちゃん。ギブ、ギブアッ、ぐふッ!!」
「亮くぅ~ん」
ほっぺたを僕のほっぺたにすりすりしてくる。
あ、なんか女子の匂いがする・・・・。
ついでに汗のにおいと相まって脳がクラクラしてきた・・・・。
チェストオオオオオ!!!!
こんなことでは死んでしまう!!
物理的に!!
僕はありったけの力で莉羅ちゃんを引きはがす。
「あ、亮くんひどい」
「ハァ、ひどいとか、ハァ、そういう、ハァ、問題じゃないよ」
熱さと苦しさでいまだに息が苦しい。
そうして僕は目のまえに立つ、僕より3センチほど背が高い女子を睨む。
「ごめんね亮くん。亮くんがあまりに可愛いから」
「僕は可愛いとか言われたくないの!!かっこいいって言われたいの!!」
そういうと彼女は僕のつま先から頭までを流れるように見てから
「か、っこ、いい???」
「う、うるさい!!幼馴染だからってバカにして!!もう口きいてあげないからね!!」
「え!?ごめんってば亮くん、ゆるしてよぉ」
この無神経な彼女、五福 莉羅は僕の小さいころからの幼馴染だ。
テニスをしているため、健康的な小麦色の肌。
うなじがエロいポニーテール。
高校2年生とは思えないほどの大きさのふたつのメロン。
制服のスカートが防御力を下げてくれたおかげで拝むことができる少しむちっとした太ももと綺麗な生脚。
そしてなんといっても莉羅ちゃん最大の特徴は異常なほどの馬鹿力だ。
テニスの試合ではその馬鹿力が生み出す圧倒的速度のサーブでサービスエースを取りまくっている。
僕はこんな幼馴染がいてすごく誇らしいし、莉羅ちゃんが試合に勝った時は自分のことのように嬉しい。
ただ、僕を可愛いと言って小馬鹿にするのはやめていただきたい。
「ほら、今の冗談だからさ?泣かないでよ」
「ぐすっ、だって亮くんが口きいてくれないって・・・・」
「冗談だって。ほら遅刻するよ?早く行こう?」
「うん・・・・。手、つないで」
「え、。で、でもここ他の生徒とか通るし・・・」
「つながないと行きたくない・・・」
「わ、わかったよ。もう。今日だけだからね」
こう言いつつも明日もつなぐことになることを僕は知っている。
◇◇◇◇◇
今は入学式が終わったあとの休み時間。
僕は隣の席の友達、関 秋摩と雑談中。
「いいよなぁ亮は。顔面偏差値高いし、かわいい幼馴染いるしよ」
「え、僕ってイケメンかな?えへへへ」
「いや、イケメンじゃなくて可愛い系」
「ぐふっ!」
容姿を誉められたと思ったら毎回これだ。
ちくしょう!!
「普通可愛い幼馴染がいてしかもその子とイチャイチャしてたら目の敵にされそうなところなのにお前は大丈夫だからなぁ。なんかこの学校の男子の暗黙の了解として亮をいじめたらダメみたいな風潮あるし」
「え、なにそれ。初耳なんですけど」
「だってあれだぜ?五福さんに告白してフラれた理由が『私には亮くんがいるので』で潔く諦めるやつが続出してるんだぞ?亮ならしょうがないかって」
「そんな人がいるのも驚きだけど莉羅ちゃんがそんな理由で断ってるのも驚きだよ」
「なんなら2人の恋を応援しようの会まで出来ちゃってるし。ちなみに会長は俺」
「潰れてしまえそんな組織!!!」
◇◇◇◇◇
そして時は流れ、僕は莉羅ちゃんと下校中。
秋摩にあんなこと言われたから少し緊張する・・・・。
「そういえば今日は部活ないの?」
「今日は入学式だからないよ。やったね」
2人仲良く通りを歩いていると目の前にガラの悪い男が3人立ちはだかった。
「ねぇねぇ、お二人さん。一緒に遊ばない?」
3人のうちのリーダーと思われる男が言う。
「いや、あの僕たち急いでるんで」
そんなこと言いつつ僕の内心は
『絶対こいつら僕のこと女だと思ってるだろ』
だった。
そいつらの横を通ろうとするとリーダー格の男が僕の腕をつかんだ。
「俺、君のことめっちゃタイぶっ!!!」
その瞬間リーダー格の男が吹き飛ぶ。
横を見れば拳を突き出した莉羅ちゃんがいた。
あちゃ~・・・・・。
「おいお前ら、今亮くんに触ったな?その汚い手で」
莉羅ちゃんの顔が修羅のごとき憤怒の表情に染まっている。
なにを隠そう莉羅ちゃん、現在空手の全国大会を5連覇中の武闘派女子でもある。
そんな彼女に喧嘩を売ったらどうなるか分からない人はいないと思う。
そこからは一瞬だった。
3人とも莉羅ちゃんに秒殺。
そして全速力でその3人は逃げて行った。
「ふーーー」
莉羅ちゃんが深呼吸をしながら右手で胸をどんどんどんと叩いている。
なんでも興奮した気持ちを落ち着ける方法だそう。ちなみに自己流。
「ありがとう莉羅ちゃん。助かったよ」
「うん、大丈夫だよ。亮くんは私が守るから・・・・」
そういうと莉羅ちゃんの目に大粒の涙がたまり始める。
「ちょ、なんで莉羅ちゃんが泣くのさ」
僕はそんな彼女をなだめるように彼女の背中に腕を回す。
「ぐすっ、だって亮くんになにかあったらって思うと悲しくて、苦しくて」
「うん」
「今までいろんな女子とか男子とかが亮くんとしゃべってたりするとすごく苦しくて。でも迷惑かかるからって我慢してて」
「うん」
「でもあんな人たちに亮くんが傷つけられるって、亮くんを取られるって思ったら我慢できなくなって・・・。ぐすっ」
「うん」
「ひぐっ。ごめんね。亮くんは誰のものでもないのにね。こんな幼馴染でごめんね。ひっぐ」
僕は莉羅ちゃんの言葉を聞いて一層強く彼女を抱きしめる。
「莉羅ちゃんが泣くことなんて一つもないよ。莉羅ちゃんが怒ってくれたから僕は今無事なわけだしね。今頃、どこかのホテルに連れ込まれてるかもしれないし。それに莉羅ちゃんが僕のことをそんなにも想ってくれてるのはうれしいよ。迷惑だなんて少しも思ってないよ。すっごくうれしい」
「ほんと?」
「ほんとほんと」
少し抱きしめる力を弱めて莉羅ちゃんの顔をまっすぐに見つめる。
今頃僕の顔はリンゴみたいに真っ赤になっているだろうがそんなことはお構いなしだ。
「だから僕を助けてくれてありがとう」
「うん。」
「どういたしましては?」
「ッ!ど、どういたしまして」
「よし、この話はここでおしまい!!」
そう言って僕は抱きしめていた腕をほどく。
莉羅ちゃんが少し名残惜しそうにしているが気づかないふりをする。
「莉羅ちゃん今度遊園地行かない?」
「なんで遊園地?」
「いやぁ、久しぶりに行ってみたいなって思ってさ」
「うん!!行きたい!!」
「じゃあ部活休みの日教えてね」
「うん!任せて!」
帰り道気づいた時には手を繋いでいた。
どちらから繋いだなんて覚えていない。
覚えている必要もない。
さて、次は遊園地だ。
なんで遊園地かって?
告白は男からしないと漢じゃないもんな
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