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「もう少し登ったところに展望できる場所がありますよ。行ってみますか?」

役人のガーネット様が声をかけてきました。


「見晴らせるのですか?行ってみたいです」


 この辺りの地形をもう少し知っておきたいと思っていたのです。マイクと一緒にガーネット様について行きながら聞いてみました。


「この辺りの地形に詳しいのですね」

「足を運んで調査していますから。議会に計るための資料作りが必要でしたので」


 ガーネット様は真面目な役人のようです。彼は婆さんが盗賊だってことを知っているのでしょうか?思ったままに直球で聞いてみます。


「えっと、信じてもらえるかわかりませんが、二年前に盗賊にさらわれたことがあって、その時の盗賊の頭が・・・」

「そうでしたか。ご無事で何よりでした」

ガーネット様は私の話にかぶせるように返事を返しました。婆さんの正体は言っちゃダメなヤツなのかな?


「モンステラ族が盗賊行為をしているのは承知しています。アジトがモンステラの集落であることもね。ただし集落は帝国の領土ですから王国は手が出せません。王国内で捕まえたなら問答無用で縛り首にする予定です」


「え?でもお婆さんはお城に来てましたよ?」

「ああ、見えてきました。この岩の上から景色を眺めてください」

なんだかごまかされたような気がしますが・・・とりあえず岩によじ登り眺めます。


 眼下にはV字型の谷があり斜面は樹木に覆われています。一部むき出しの岩壁が見えます。あそこが崩落したのでしょう。真下に崩れた土砂が溜まっています。


 土砂の先の谷川は干上がっていますが下流に目をやると他の川筋から水が流れ込んでいるらしく水がきらめいて見えました。


 その先の平らになった所は集落でしょうか。大小の建物が整然と並んでいます。建物の周りに広がる緑は畑のようです。その先は茶色の大地が砂漠のように広がっています。川は大地に吸収されるように消えてなくなっていました。


「あそこに見えているすべてが工場関係の施設です。そしてその向こうに、見えますか?演習をしているようだが・・・」

 黒い蟻の群れのような塊が散開したり集まったりしているようです。

「あれが帝国軍ですか?」

「前回見た時の倍・・・いや三倍ほどに増えましたか?騎士に確認してもらいましょう。それよりもダムが決壊する程の雨を降らせることは可能ですか?」


 今の位置からダムの様子が良く見えます。深さのある谷です。魔力だけに頼って水を溜めたら十日以上かかるような気がします。しんどくて嫌だなと思います。以前に池の水を溜めましたがあれでも相当消耗しました。あの時は二時間くらい雨を降らせただけですが。


 今の季節、王国では東の海から湿った風が吹いて西の山脈にぶつかり国土に雨が降ります。風は山脈を超えて帝国に流れますが帝国側に流れる風は乾いています。この場所の乾いた空気中に水を発生させるのは大変です。


 空を見上げます。帝国の空は晴れ渡っています。山脈の稜線を見ると雲がかかっています。

『あの雲をこっちまで持ってこれないかな?』


《お空の高いところにビュンビュン風が吹き渡ります》《山の向こうの湿った雲が谷の上までやって来ます》


 うまくいきそうです。雲をダムの上まで移動させ積み重ねていきます。帝国側の空気が乾いていたせいで始めのうちは消えてなくなる雲が多かったですが辺りが湿ってくるにつれて効率よく雲を重ねることが出来るようになりました。イメージは積乱雲なのですがそこまで厚く重なる前に雨が降り始めました。


 雨が降り始めた時点で雲を動かすのを止めました。ひとしきり降ると雲は無くなります。ダムの水量は少し増えたように見えます。


「おお、降りましたね」

ガーネット様が声を上げています。


「大丈夫かよ?無理してんじゃねえの?」

 マイクが顔を覗き込んできました。あまりに真剣な表情をしています。驚いてドキドキしてしまいました。不意打ちは止めて欲しいです。

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