表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/47

お頭

ブクマありがとうございます。なんとか毎日更新しています。

誤字報告ありがとうございます訂正しました<(_ _)>5/29

 翌朝、早めに起きだし身支度を済ませ食堂に行って美味しい朝ご飯を頂きました。


 マイクが

「くそ!オレはまだ弱い!」

などと言っていますが気にしないことにします。



 時間が来て応接室のような場所に案内されました。四人くらい座れる応接セットが置いてあります。調度品も華美ではなく落ち着いた感じの部屋です。身分が高いお客には使えない部屋だと思います。


 勧められた椅子に座るとお茶が出されました。マイクは護衛らしく後ろに控えています。


 お茶を二口ほど頂いたところで役人の服装をした若者とゆったりした民族衣装をまとった年配の女性が騎士数名と一緒に入ってきました。とたんにマイクが殺気を放ちます。私も椅子から立ち上がりました。


「おや?」

老婦人は殺気に気が付いているのでしょう。私たちを見てにやりと笑います。

「お知り合いでしたか?」

若者は不思議そうに私たちを見ています。

「いえ。お名前も存じません。ただ以前同じ馬車に乗り合わせてお世話になった事を思い出しました」

私は老婦人を警戒しながらそう答えます。どうしてこの人が此処にいるのか説明が欲しいところです。だってこの人盗賊の頭ですよ。マイクが言うところのクソババア本人です。


 マイクは護衛という事で剣を持ち込んでいます。でも今は襲われているわけではないので切りかかる事はできません。ただただ濃い殺気をぶつけています。騎士の方々はマイクに反応して警戒を強めました。王城内で客人を切るわけにいかないのでマイクは跳びかかったりできません。役人の方は武芸はからきしなのでしょう。私たちが剣呑な雰囲気になっていることに気が付いていないようです。


「そうですか。ではまず紹介しましょう。こちらはモンステラ族の族長でストレチア様とおっしゃいます。こちらは水魔法の使い手であるセイラさんです。申し遅れましたが私は外務局の職員のクロム・ガーネットと申します。よろしくお願いします」

「ストレチア・モンステラというよ。よろしくねセイラさん」

「教会職員のセイラです。よろしく」


 私はスカートを持ち上げ腰を落として挨拶をしました。マイクは騎士たちとにらみ合っています。外務局の役人クロムさんは私たちに椅子をすすめ今回の顔合わせの説明を始めました。


「帝国と緊張状態にあることは既にご存じのことと思います。対応策として国内の魔法使いに協力をお願いすることが議会で決定しました。ですから召喚状に応じていただいた方々にこうして個別にお願いをしているわけです」

 お願いと言っていますがこちらに拒否権などありません。召喚状ってものは拒否したら罰せられます。一方的な命令書です。

「モンステラ族は10年ほど前までは独立した国を持っていました。帝国と王国の境になっている山脈の中ほどにあった小国家群の内の一つでした。現在は帝国に吸収されています」


「そのモンステラの方がなぜ王国に?今は帝国の一部なのでしょう?」


 私の質問に役人と族長は視線を交差させました。『この婆さん何を企んでるのかしら?』と思います。ここが町中だったなら大声で『盗賊だ!』って言ってやるのですけどね。役人がこの婆さんをお客として扱っているのでうっかり手出しができません。


「私が自分で話すよ」

婆さんが話を始めました。この人は口先で丸め込んできます。王城にも口八丁で入り込んだのでしょうか?


「まあ、そんなに警戒しなさんな。あたしゃこれでもモンステラが国だった時にはそれなりの立場に居たんだよ。外交で此処の王城にも何度か来ている。若い頃だけどね。だから外務局に知り合いがいるのさ。


 モンステラの特産品は『魔物除け』だった。


 主原料になる植物はモンステラ地域の固有種で製造方法も技術も職人ごとに秘伝があってね。王国や帝国に高い値段で売れたからそれなりの暮らしが出来ていたものさ。


 ところが帝国が攻めてきて植物の栽培に適した土地も職人もみんな取り上げられた。そして奴らは大量に『魔物除け』を作った。職人は工場に押し込まれ帝国に指示されたとおりの均一な製品を作らされてる。


『魔物除け』は今じゃ帝国の独占販売になってる。そして最近コレを王国には売らなくなった。何故だと思う?」

婆さんはいやらしい笑みを浮かべました。


「ここ数か月の間帝国から『魔物除け』が入荷しなくなりました。これは帝国が山脈を超えて王国に攻め入る準備を始めたという意味です。『魔物除け』が無ければ王国は国境線で帝国を迎え撃つのが難しくなります。つまり王国は領土内まで攻め込まれてしまう危険に瀕している。これは回避したい」

役人は婆さんと打ち合わせでもしていたのでしょう。すらすらと話を繋げます。


「そこであんたに雨を降らせてもらいたいのさ」

突然話を転換されて私は目をぱちくりさせました。話を端折りすぎです。


「干上がった池をいっぱいにするまで雨を降らせる魔法使いが居るって聞いてね。それであたしはこの計画を思いついたのさ。あたしたちの集落の近くにある干上がった池に水を溜めてもらいたい。そうすれば帝国は山を越えられなくなる。そういう話を王国に持ってきたんだよ」


「この計画も既に議会で承認されています。王国の利になる良くできた案であると」


 役人は「拒否できないぞ」と圧をかけてきます。噂になるほど派手なことをしちゃったんですね私。目立たないように生きてきたつもりだったのに。



 昨年は雨が少なく日照りの夏でしたので私は頼まれてはあちこちに雨を降らせました。これが噂になったのでしょう。


 初めのうちは村の畑やカンランの開墾地限定だったのです。どこからか話が伝わって教会経由で依頼が来るようになりました。近い場所なら『社会見学』などと理由をつけて孤児院の子ども達を連れて行ったりして楽しかったですよ。警備員の方も付いて来てくれましたし。


 池に水を溜めたのはトムやブラウンに煽られたから。賭けをしたのですよ。池が一杯になるまで水を溜めたら私の勝ち。できなかったら子ども達の勝ち。私は勝つため意地になって水を溜めたのでした。


 やるんじゃなかった。あそこまでやる必要は無かったもの。




 ところで池に水を溜めたらどうして帝国が攻めて来なくなるのでしょう?婆さんは何かを企んでいるのでしょうが詳しいことは明かさないつもりのようです。婆さんの依頼など受けたくないです。


 でも召喚状で呼び出されての仕事ですから断れるはずがありません。


 ちなみにマイクはずっと婆さんを睨みつけています。自分も殺されかけましたし仲間のスミスが殺されましたからね。


 そういえば護衛の目的も『クソババアにリベンジする』でしたよね。隙さえあれば跳びかかってしまいそうです。


孤児院の子ども達との賭け


ハンク:大きい池ですがすっかり干上がっていますね

ブラウン:セイラ、この池が一杯になるまで雨出せる?

トム:いや無理だろう

ベス:出せるわよね!セイラ!

クラム:そうよ!馬鹿にしないで

ブラウン:じゃあやって見せろよ

ハンク:出来たらボクたちで溜まっている縫物を引き受けますよ

トム:じゃあできなかったらセイラはマイクに告白な!

ベス:え!告白!やったあ!セイラ頑張って告白してね

セイラ:・・・・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ