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王城

誤字報告ありがとうございます訂正しました<(_ _)>5/29

 王城に案内すると言われ予定が狂ってしまいました。二年前お世話になった教会に出向いてお礼を言いたかったのですけれど今夜の予定が変わったと連絡しなければなりません。


 入場門周辺で日雇い仕事を求めていた少年を一人捉まえ水の女神教会に手紙を届けるようにお願いしました。銀貨一枚で引き受けてくれました。


 マイクも一緒に王城へ行くと言い、馬車を返してくれと別の少年に頼んでいます。貸し馬車屋で受け取りをもらったらソレを冒険者組合に届けるように言ってました。



 そのあとで黒塗りの乗用馬車に乗りました。席が二人分しかない小型馬車です。私は一人で座席に座りました。マイクは座席には座らず後部のタラップに立ち乗りしていくようです。もう一人座れるのだから中に居ればいいのにと思いましたが客室では外の様子が分からないからダメなのだそうです。


 王城までの坂道を馬車はゆっくりと登っていきます。王城の東壁に開いている平民用の門から入場しました。商人などが荷物の搬入をするので馬車のまま入れます。人々が忙しそうに出入りしていてちょっとした街のようです。倉庫が途切れたあたりで馬車から降ろされました。


 マイクが私の近くに立ってあちこち警戒しています。私の加護精霊たちもスイスイ飛び回っていますが不審なものは無いようです。

 受付窓口のような場所に連れていかれました。送って来てくれた兵士はそこで帰るようです。私は受付の人に身分証と召喚状を見せました。


 案内係がやってきて私は建物の中に入ります。マイクは護衛の依頼書を見せながらついて行くと主張します。

「そうですか。どうぞついて来てください」

と問題なく案内してくれました。

 

 

 立ち入りが許可されているのは食堂と中庭。それにシャワー室なども使って良いそうです。最後に小さめな部屋に案内されました。


「宿泊はこちらの部屋をお使いください。鍵をお渡しします。ご自分の荷物はご自身で用心してください。一人部屋を二部屋は用意できなかったので二人部屋になります。よろしいですか?」


 マイクがさっと鍵を受け取り中を改めます。狭い部屋に二段ベッドが一台置いてあります。手水鉢と鏡。小テーブルもありました。


「かまいません」

と返事をしたのはマイクです。え?私は困るんですけども。そこ勝手に返事をしないでくださいよ。


「明日は時間になりましたら担当が迎えに参ります。謁見はございませんので服装は問いません。今着ている服装でも大丈夫です。御用がありましたらお手数ですが先ほどの食堂でお声がけください。誰かしら居りますので」

 案内人はそう言うと丁寧に礼をして去っていきました。


 マイクはさっさと室内に入り安全確認をしています。

「よし、大丈夫だ。何処にも罠はない」

「護衛のお仕事ありがとうマイク。でもさすがに王城の部屋に罠はないと思う」

「そうか?」

そうです。精霊も王都に来てからは警戒をしていません。ただふよふよとマイクの周囲を面白そうに飛び回っているだけです。


「ならベッドはお前上の段な。オレは下の段」

「いやいやいや!さっきからなんで勝手に決めてるの?一部屋で構わないとか?困るでしょ?」

「なんで?一人ずつのベッドがあるなら教会よりも待遇がいいだろ?今夜は礼拝堂の椅子で寝るのだと思っていたからな」


 そうでしたね。教会は泊めてくれるけれどベッドが足りないのでした。空きがあれば借りることが出来ますが無ければ誰かのベッドを半分借りるか礼拝堂の木製長椅子で寝ることになりますね。


「それと、いつまで廊下に居る気だ?」

 マイクは部屋に入りましたが私は廊下に居たまま話をしていました。


 いきなり手首をつかまれ部屋に引っ張り込まれます。部屋に入ったとたん私の後ろで扉が閉まりその扉に押し付けられました。


 私の頭の横にはマイクの腕があります。・・・えっとこれは・・・壁ドン?いや扉ドンの状態ですか?マイク何やってるんですか?急にこんな展開になっても困ります。


 びっくりして何もしゃべれません。


 マイクの頭の横には呑気そうにフヨフヨ浮かぶ二体の加護精霊。


 君たち危機を感知してくれないの?なんでそんなに呑気なの?私、心拍数があがっちゃったよ?このままだと心臓発作で死んじゃうよ?


 マイクの顔がすごく近いです。呼吸音が聞こえるくらいに近いです。吐息が頬に感じるくらいに近いです。私は必死になって目を見開きます。だってここでうっかり目を閉じたら『同意した』とみなされますよ?


 確かにマイクの事は好きです。でも今は困ります。女の子には準備することが色々あるのです。


「オレは冒険者だからサ、甘い言葉とか知らないし言えないからちょっと力ずくになるけど」 


 そうですか。なら私も力ずくで返事をしますから文句言わないでね。

《あらあら不思議。水の球が湧き出してマイクめがけて飛び出します》《そしてたちまち乾いてしまいました》


 お腹の辺りにこぶし大の水球を作りマイクの鳩尾めがけて高速で打ち込んでみました。

「ぐへ!」

という声とともにマイクは吹っ飛び二段ベッドの柱にぶつかって床に崩れ落ちます。怪我をしては困るので診てみましたがさすがに冒険者だけあって丈夫ですね。少しすれば目を覚ましそうです。


 旅の仕度を脱いでワンピースに着替えたかったのです。今のうちに済ませましょう。

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