召喚
誤字報告ありがとうございます訂正しました<(_ _)>6/3
召喚されてしまったので王城まで行かなければなりません。
呼び出しの日までに数日ありますからその間に私の代わりを教会にお願いしなければなりません。
王城も勝手なものですね。追い出したり呼び出したり。
召喚状には呼び出しの日時があるだけで用件は書かれていませんでした。いったいどれくらいの期間修道院から離れなければならないのでしょう?見当がつかずに困ってしまいます。
カンランの教会からシスターが来ました。見習いシスターとして数年間保育所の仕事を手伝ってくれていた女性です。半年ほど前に一人前のシスターになっています。
「セイラさんの代わりとして孤児院の世話係になりましたヘレンです。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします。シスターヘレンなら安心して子供たちを任せられます」
「任せてください。それにしても召喚って大変ですね。実は修道士やシスターにも召喚状が届いているのですよ。回復魔法が使える若い人ばかり。『従軍させるつもりだろうか?』って司祭様がおっしゃってました」
「そんな!病人や怪我人のお世話をしている職員のところに来たのですか?召喚状」
「そうなんですよ。療養施設なんか今だって人手不足なのに。癒し手が減るから困っています」
教会も大変なのですね。ともかく私の引継ぎも終わらせましょう。クラムが孤児院に入った後、新しい子は入っていません。子ども達は自分の事は自分で出来るようになってきています。二年前よりは多少安心できる状態だと思います。
シスターヘレンには修道院で暮らしてもらうので部屋も整えました。
ひと段落した頃にマイクがやって来ました。
「兄ちゃん肉は?」
「悪いな、今日は無いんだ。ところでセイラは居るか?」
私に用があるらしいです。食堂で迎えました。
「お前、王都に行くんだろ?どうやって行くんだ?」
「どうって?普通によ。停車場から馬車に乗って」
王都からカンランにやってきた時と同じ方法で王都に行く予定でいます。私たちが襲われた後は盗賊が出たという話を聞きません。今回は無事な旅になって欲しいです。
「切符はもう買ったのか?」
「まだよ。当日買うつもりだけど」
「そうか。なら切符と同じ料金でオレを護衛に雇え。一緒に行ってやる」
「え?雇えって?なんで?」
「何でもいいから雇え。まあなんだ。カンランに来る時には護衛のオレが助けられちまったからな。リベンジだ」
リベンジって・・・盗賊に襲われること前提ですか?
マイクはシスターテレサに
「セイラをしばらく貸してくれ」
と断わりを入れて私を冒険者組合に引っ張っていきました。マイクに護衛の指名依頼を入れろと言うのです。
「そんな面倒くさいことをしなくてもいいわよ」
「きちんとした手続きをしてから依頼を受けないとオレが組合に怒られるんだ」
いや、そうじゃなくてですね。個人で護衛をつけるなんて贅沢なことをしなくてもいいんじゃないかなってことを言ったのです。
マイクが煩く依頼しろと言うので組合の受付で依頼書を書きました。
『冒険者マイクへの依頼。修道院職員セイラがカンラン・王都を往復する間の護衛・依頼料は金貨一枚』
依頼書に金貨一枚と手数料を添えて事務所の窓口に提出しました。マイクが依頼を引き受ける手続きをして契約は完了しました。
「でも私、王都から帰れるのがいつになるかわからないのよ。帰りはどうやってマイクに連絡すれば良いの?」
「この依頼はカンランから出発してカンランに帰ってくるまでの護衛だぞ。ずっと護衛しているに決まってる」
「え?」
「ずっと一緒にいる」
真剣な顔でそう言うマイクの顔を凝視してしまったせいでしょう。私の心臓は痛いほどに早く強く鼓動しています。呼吸も苦しくなりました。血が巡り過ぎたのか顔が熱くて困ります。
マイクが私の顔からそっと目をそらしました。彼の耳から首筋にかけての皮膚が赤くなっています。首の太い血管が脈打っているのが見えました。
組合の窓口付近にいた人たちが私たちのやり取りに注目しています。誰かが口笛を吹きました。マイクは私の手を引いて組合の建物から連れ出しました。
「嫌なんだよ」
「え?」
「だから目の届かないところに行かれるのは嫌なんだ」
マイクは急ぐように歩きながらそう言います。私の手を掴んで引っ張ったままです。
私は動悸息切れから心臓発作を起こすのではないかと危ぶまれるような状態で修道院へ帰っていきました。




