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子ども達

今朝の投稿はちょっと遅れてしまいました。

誤字報告ありがとうございます訂正しました<(_ _)>6/2

 修道院の朝は早いです。子ども達は夜明けと共に庭へ出ていきました。鶏の世話をしたり畑で豆を収穫したり。楽しそうに動き回っています。


 子どもの寝室は大部屋で10台のベッドが置いてあります。現在孤児院に在籍している子どもは4人なので半分以上のベッドは空いています。カンランの街が荒れていた時代には一つのベッドに二人三人と寝かせなければならないほど沢山の子を預かっていたそうです。


 ベッドも含め子ども部屋全体が汚い感じです。人手が足りなくて掃除が行き届いていないのでしょう。窓を開け換気をしてからベッド一台ごとに洗浄の魔法をかけます。使っているベッドは寝具が乱れたままです。片付けを教えなければいけません。


 一台のベッドで毛布がモゾモゾ動きます。まだ起きていない子が一人いたようです。


「朝ですよ。起きなさい」

毛布を捲ろうしましたが中から小さな手が一生懸命掴んでいます。


「どうしたのかな?具合が悪い?」

返事がありません。モゾモゾ動きながら毛布を体に巻き付けようとしています。毛布が動くたびに独特の臭いが漂います。ああこれはやっちゃいましたね。


「おねしょをしちゃったかな?叱らないから顔を出して。きれいにしましょ?」


叱らないという単語に反応したようで毛布の中から目だけ覗かせています。私の様子を伺っているようです。それでも毛布からは出てきません。巣穴に隠れている小動物のようです。彼女にとって私は知らない人です。信用できないのでしょう。仕方ない、寝たままでも構いませんよ。このまま一気に洗浄してしまいましょう。


「名前はベスだったかな?魔法で洗うからそのままじっとしていてね」

声をかけてから洗浄をかけました

《あらあら不思議。ベスの体の中から水が湧き出して体や布団についていた汚れと一緒にバシャンと床に落っこちました》《そしてたちまち乾いてしまいました》


 ベスを洗った後は残りのベッドや床も洗浄します。掃出し窓から汚れを外へ流し乾燥させました。


 ベスはベットの上に起き上がりポカンと見ています。私は乱れている寝具を整頓しながら声をかけます。


「きれいになったでしょ?毛布を畳んでから起きようね。こうやって畳むの。同じようにできるかな?」

 ベスはこくりと頷き小さな体で一生懸命毛布を畳み始めます。年は三才くらいでしょうか?茶色のくせ毛がくるくるしています。白い簡素な服は寝間着かな?体の小さな子が頑張って毛布と格闘している様子になんだかほっこりしてしまいます。


 室内を掃除していると男の子が一人窓から顔を覗かせます。

「やーいベス!今日もおねしょだろ!」

 この子はトム。6歳で孤児院では一番の年長者だったと思います。茶髪と黒目の我の強そうな子です。いじめっ子気質というかガキ大将というか、そういったタイプの子でしょうか?後の二人もやってきました。ハンク5歳とブラウン4歳どちらも黒髪黒目の少年です。


少年達の着衣は小汚いです。羽織っているスモックは全体的に茶色くて生地の色が不明です。シャツの襟は黒ずんでズボンも泥だらけです。長い間洗っていないのでしょうか?ベスも着替えてきました。ブラウスにスカート。その上にスモックを着ています。さっき洗浄したのに着替えてきた服が汚くて残念です。


 窓辺に行って子供たちを洗浄しました。


 少年たちは魔法で洗われる感覚に歓声なのか悲鳴なのかよくわからない声を出しています。ベスはくすぐったそうに首を縮めていました。洗ってみると子どもたちの着ていたシャツは白。スモックはギンガムチェックのブルーでした。


 ベスを連れて食堂に向かいます。男の子達は庭から走っていきました。


 朝食は先ほど収穫した卵や野菜を使って自分たちで作ります。村のおかみさんたちが食事の支度をしてくれるのは夕食だけだそうですです。


 竈に火を入れます。トムが慣れた手つきで火を起こし始めました。食糧庫を覗くとパンとベーコンがありました。テーブルの上には畑から収穫したサヤエンドウと生みたて卵。ハンク、ブラウン、ベスの三人でサヤエンドウの筋を取っています。私もサヤエンドウの下ごしらえに参加します。


 間もなくシスターがやってきました。顔を見れば高齢のような印象ですが背筋はピンと伸びて足取りも確かです。優しいけれどしっかりした声で挨拶をくれました。


「おはようございます。皆さん。まあまあ小ざっぱりして。早速世話をありがとうセイラ」

「どういたしましてシスター。おはようございます」

「おはよう。シスターテレサ」

「おはようシスター。今日はベーコン食べて良い?」

「おはようシスター。マメがたくさん採れた。卵は三個あった」

「おはようごじゃます」

「それでは豆と卵でスープを作りましょう。ベーコンを焼いてもらえますか?セイラ」


 シスターの一声で朝のメニューが決まりました。子どもたちは食器を並べパンを配っています。シスターがスープを作る横で私はベーコンを焼きます。フライパンを温めて薄切りにしたベーコンを入れて。ちょっと焦げましたがこれくらいなら大丈夫ですね?


 皆でテーブルを囲みシスターテレサが風の精霊に感謝の祈りを捧げます。室内にふわりと風が吹きました。精霊が応えたのでしょうか?その後はワイワイとにぎやかに食事を摂りました。


「ベーコン焦げてる!焦げすぎ!」

ブラウンは厳しすぎですよ。カリカリベーコンはこれくらいでちょうどいいと思います。

「ベスがマメ残してるよ」

ハンクがベスの世話を焼いています。幼いベスは苦手なのかマメだけ残してスープを飲んだようです。頑張って食べようねと声をかける前に

「じゃあオレにちょうだい」

とトムが声を上げ、ベスは食器をサッとトムの前に差し出します。マメはあっという間にトムのお腹に収まりました。

「ベスはもう少し野菜を食べるようにしましょうね」

とシスターが注意した時にマメは存在していませんでした。それでもベスは素直にコクリと頷きながら。

「はい。たべます」

と返事をしていました。


 


 沢山のアクセスありがとうございます。読んでいただけてとても嬉しいです。


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