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襲撃

サブタイトルのとおり襲撃です。流血があります。

 天井から滴り落ちた血に驚いて私は馬車から飛び出しました。飛び散った血で汚れた地面。馬車の脇に護衛の男性が倒れています。馬車の屋根に登っていた人だと思います。うつ伏せに倒れているお腹の辺りには血だまりが出来ていました。怪我人だと認識した瞬間に体が動きました。


 倒れている男性の脇に膝をつき呼吸と脈を確認します。


 体温を感じます。息があります。辛うじて脈も感じ取れます。


「治療」

《あらあら不思議。護衛の人の体の中の水が動いて裂かれた傷を塞ぎます。そしてたちまち乾いてしまいました》


 傷は塞がったようです。傷口も乾いたようです。これ以上血を失うことは無いでしょう。何故か治療のコツが解りました。応急処置程度の治療しか出来ませんでしたが。男性は血を流し過ぎて気を失っているようでした。私の服は血でべっとり汚れてしまいました。血だまりに座り込んだからでしょう。


「眠り茸は食べなかったのかい?馬鹿な子だね。素直に食べていれば怖い思いをしなくて済んだのに」


 そう言いながら馬車からお婆さんが降りてきました。私は腕を掴まれます。肩を捻られて痛い!痛い!前にも同じような事がありました。デジャヴではありません。どうしていつもこんな目に合うのでしょうか?


 お婆さんは私の腕を抑え込んだまま倒れている男性を足で蹴とばします。男性はピクリとも動きません。そんなに強く蹴ると傷口が開いてしまいます。


「ふむ。死んだか」

 私が治療したことには気付いていないようです。


 肩が外れそうに痛いです。痛みで声も出せません。おしゃべり好きで人の良さそうなお婆さんがどうしてこんなことをしているのでしょう?何がどうなっているのか理解できません。


「お頭!制圧完了しやした」

 馬に乗った男たちが馬車の周りを取り囲んでいました。髭面でいかにも盗賊団といった風体の男たちです。彼らの一人がこちらに向かって声をかけたのです。


「女三人確保、先頭の馬車に乗せろ。二番目の馬車はいらない馬だけ連れていく。荷車は頂戴するが男は捨ていく。眠り茸を食ってないヤツがいる。油断すんじゃないよ。抵抗したら殺せ。自警団が来る前にずらかるよ」


 お婆さんは盗賊団に淡々と命令を出しています。


 ノビル村でお婆さんが皆に食べさせて回っていたのは「眠り茸」だったのですね。御者も護衛も体が動かないらしく馬車から引きずり落とされています。盗賊の一人が護衛の女性を肩に担いできました。彼女はぐったりしていて動きません。


「女はそいつで全部だ。放り込め。行くよ」


 盗賊は先頭の馬車に護衛の女性を放り込みます。続けて私も押し込まれました。扉がバタンと閉まります。私は扉をガチャガチャ揺すりましたが開きませんでした。外からは叩いたり引きずったりする物音と盗賊たちの粗野な会話が聞こえます。やがて馬車はゆっくりと動き始めました。次第に速度を上げていきます。


 いったいこれからどうなるのでしょう。菫色の服を着たお姉さんはノビル村を出発した時と同じ姿勢で眠っています。護衛の女性は床に倒れています。私は車内に転がっていたカバンを拾いました。そして空いている座席に腰を下ろし膝を抱えて蹲りました。


 お婆さんが盗賊の頭だったことがショックでした。馬車の屋根にいた護衛の男性に躊躇なく風の刃を放っているのを見てしまった事がショックでした。数時間とはいえ一緒にいた人たちを全く戸惑わずに殺せと言っていた事もショックでした。


 先ほどまで同じ馬車に乗り合わせていたのは何処にでもいるおしゃべりで世話好きなお婆さんだったのではないのでしょうか。馬車に押し込められた後のことは見ていません。馬車から引きずり降ろされた人たちは生きているのでしょうか?


 恐ろしくて、恐ろしくて、膝を抱えて震えました。震えが止まりませんでした。


 風が吹いたことに驚いて天井を見上げます。切り裂かれた天井の隙間から青空が見えています。天井には血のシミがこびりついていました。


 歯がガチガチ鳴っています。何も考えることが出来ません。音や時間の感覚さえ分からなくなりました。


 ぼんやり眺めた窓の外に木々が見えています。路面が悪くなったのか馬車の揺れが激しくなりました。


 突然大きく揺さぶられたことで意識が浮上しました。馬車が揺れたのでしょうか?盗賊たちの騒ぐ声や金属の音が聞こえます。重量のある何かが走るような音。獣の声。盗賊の悲鳴。風の唸る音。木々が折れる音。何が起きているのでしょう。盗賊たちが歓声を上げやがて静まりました。


 床に倒れていた護衛の女性がうめき声を上げました。目を覚ましたようです。起き上がり頭痛をこらえるように頭を抱えています。

「お水飲みますか?」

カバンの中に水筒があったことを思い出したので声をかけてみました。

「いらないけど…いったいどうなっているの?盗賊の襲撃があったんだっけ?」


 菫色の服を着たお姉さんも呻き声をあげ頭を抱えています。『眠り茸で眠った後は頭が痛くなるのかな』などとぼんやりした頭で考えました。



たくさんのかたにアクセスいただき狂喜乱舞しています。

頑張って続きをかきますね


ジャンルを異世界(恋愛)に設定してあるのですが、ヒロインは生きることに忙しくて恋愛している暇がありません。困ったな。いちゃいちゃハッピーエンドを目指しているはずなのに・・・

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