表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/12

第四話 「"レベル4"の義妹」

「ただいまー」


玄関の扉を開けながら、思わずため息が漏れた。

パーティーで雑用をしていた頃よりは早く帰宅できたはずなのに、今日は妙に長い一日だった気がする。


――魔術が使えるようになり、大精霊イムと契約し、ランクAの【シャドウ・ウルフ】を倒す。

まさかこんな大冒険みたいな日になるなんて、朝の俺は想像もしてなかっただろう。


普段ならこの後、食べ盛りの妹のためにたくさん料理を作るのが日課だが――今日は違う。

玄関先には、すでに下処理を終えた巨大な【シャドウ・ウルフ】がドンと鎮座している。これだけあれば、さすがのリアも満腹になるだろう……多分。


「お兄ぃ、おかえりー!」


玄関を開けた途端、妹のリアが元気よく飛び出してきた。黒髪がふわりと揺れ、珍しい紫色の瞳がキラキラと輝いている。


だが、俺の背後にある巨大な獣の死骸を見た瞬間、リアの表情は一変した。


「……うわ、どしたのその【シャドウ・ウルフ】?」


「ダンジョンの十階層で倒した。今日の晩御飯だぞ。」


「あの十階層で!? って、倒したって……お兄ぃ一人で?」


「あぁ。聞いて驚け? 俺、魔術を使えるようになったんだ。」


一拍の沈黙の後――


「……え……えええ……ええええええええっ!? お兄ぃが魔術ををををっ!?」


リアは紫色の瞳を見開き、顔を真っ赤にして叫び声を上げた。その反応に、思わず苦笑いが漏れる。


「そ、そんなに驚くことか?」


「そりゃ驚くよ! お兄ぃ、今の今まで原因不明で魔術使えなかったじゃん!」


「まぁ、そうだけどさ……」


と、その時、リアの視線が俺の後ろに向けられた。


「ところでお兄ぃ、その後ろの人は……?」


リアの視線の先には、俺の後ろに立つ赤髪の少女――いや、大精霊イムの姿があった。


「あぁ、こいつはイム。昔、母さんと契約してた大精霊で、今は俺の契約者だ」


「へぇ……大精霊……って、え!? 大精霊!?」


リアは再び目を見開き、驚きの声を上げた。


「な……なんで君たち兄妹は、血が繋がってないのに反応までそっくりなのかなぁ……?」


イムは呆れたように言いながらも、どこか楽しげな表情を浮かべていた。


確かに俺も、リアが本当の妹じゃないと聞いたときは驚いた。

でも、それでも俺は今でもリアを妹だと思っている。髪の色も同じ黒、性格も似ているとよく言われるし、何よりも一緒に過ごした時間が俺たちを家族にしたんだから。


――だが、リアはどう思っているのだろうか。


「……お兄ぃ、知ってた? 私とお兄ぃが本当の兄妹じゃないって……」


リアの声が少しだけ低くなり、その紫色の瞳が陰りを帯びた気がした。


「あ、あぁ……と言ってもさっきイムから聞いたばかりだけど

「……そっか…」


その瞬間、リアの顔から笑顔が消え、静かな沈黙が流れる。

このままじゃダメだ――俺はそう思い、リアに向かって真剣に言葉を紡いだ。


「リア。血が繋がってなくても、俺とお前は家族だぞ」


俺の言葉にリアは一瞬きょとんとした顔をしたが、次の瞬間――


「 私お兄ぃと結婚できるじゃん!」


満面の笑みでそう言い放った。


「わぉ、そうきたかぁ」


イムが驚きの声を上げる横で、俺は頭を抱えた。

何を言ってるんだ、この妹は……!?


てっきり落ち込んでいると思っていたのに、この予想外すぎる展開に俺は完全に混乱した。


15歳にして魔術師階級”レベル4”に到達し、王族直属の魔術師団に所属するリア。さらにその中でも五本の指に入る実力者である彼女の唯一の欠点――それは、


重度のブラコンである。


イムによると、十三年前、母クレアがとある事件を解決した際に、巻き込まれていた孤児院から引き取られた少女。それがリアだそうだ。

彼女には未だに解明されていない、魔術とは異なる特殊な力を持っているらしい。また本人もその能力の全貌を理解していないが、母クレアは「十三年前の事件と関係している」と言っていた。


今のところ害はないようだが……俺としては、リアのブラコンの方がよっぽど深刻な問題だと思う。


「うわぁ、美味しそう~!」


気が付けばリアは【シャドウ・ウルフ】を手際よく捌き、あっという間に調理を終えていた。


「俺の分はいいから、イム。お前も食べるといい。」


「え! やったー!」


イムは子供のように無邪気に喜び、リアと一緒に食卓へ向かう。

その様子はとても大精霊には見えず、ただの食いしん坊な少女にしか見えなかった。


二人は大量の【シャドウ・ウルフ】をものの五分で平らげた。


は、早すぎる……。


リアの食欲は知っていたが、イムも大食いとは。

これからはリアだけでなくイムの食費も稼がないといけない。そう考えると、給料の良い仕事を探す必要があるな。


だが――もうパーティーでの雑用生活はごめんだ。


そんなことを考えていると、食後のお茶をすするリアが唐突に口を開いた。


「あ、そういえばお兄ぃ。私、シャーロット魔術学院を受験することになったから、受かったら入学金その他もろもろよろしくね♡」


「……」


明日から、真面目に新しい仕事を探そう――。


作者からのお願い。


この作品が「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、

ブックマーク登録、そして広告下の☆☆☆☆☆を★★★★★にしていただけると嬉しいです


皆様の評価は作者の励みになりますので是非お願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ