表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浮遊の魔法使いヨワ  作者: 紺野真夜中
第1章 突然の縁談
9/323

08

 そう言うとロハ先生はスオウ王を振り返り「私から説明してもよろしいでしょうか」と頭を下げた。王は軽くうなずいて許しを出した。

「ヨワ。なんと言ったらいいのか……」

 講義中も日常会話でも絡まることを知らないロハ先生の舌と唇がよどんだ。ヨワは胸にざわめくものを感じてここから逃げ出したくなった。精神的負荷が最も病に障る。そうしたものからは逃げるのが一番の薬だと当の昔から心得ていた。だが、後ろにひかえる騎士や王の視線がヨワの足に巻きついて動けなかった。

「きみの妹さんが、亡くなられた」

 ユカシイの息を呑む声がした。

「昨夕、湖で遺体が発見されたんだ。誤って湖に転落した際、水を多量に飲んで溺れた事故死と見られている」

「そう、ですか。ルルが……」

 正直、実感の湧かない突然の訃報にヨワがつぶやいたのはそれだけだった。

「妹を失ったばかりのきみに僕もこんなことは言いたくないんだけど。ヨワ、きみに頼みがある。きみにしかできないことなんだ」

「頼み? これは名家に生まれた者の務めだろう、トゥイグ教授」

 スオウ王の言葉にロハ先生は「しかし」と弾かれたように振り返った。だがその先の言葉は王の片手によって制された。拳を握り締めてうつむくロハ先生に代わって口を開いたのは王だった。

「ホワイトピジョンの娘よ。亡き妹に代わり世継ぎを成せ」

 これにはヨワもユカシイも驚きの声を上げたまま開いた口がふさがらなかった。自分の耳さえ疑った。

「なにを驚いておる。当然の流れだろう。ね、そうだよね?」

 軽く確認の声をかけられた関白は重々しくうなずいた。

 ヨワはまいった。人目がなければ天を仰いで大きなため息をつきたいところだ。ヨワには王の言うように簡単に妹の代わりになれない理由があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ