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浮遊の魔法使いヨワ  作者: 紺野真夜中
第4章 告白と王子
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「ありがてえ! 馬で来たんだ。北門に繋いである。まずはそこへ!」

 言うや否やクロシオはヨワの手を掴んだまま走り出した。ヨワは慌てて振り返り、ベンガラとハジキに薬はあとで取りに戻ると告げた。やれやれと背を向けたベンガラの横でハジキは手を振って応えてくれた。

 一拍遅れてリンの代理の騎士はヨワを追いかけてきた。

 フラココに乗り北区海の市場前で降りたヨワは、前を走るクロシオにつづいて市場の中央通りに突っ込んだ。ちょうど土曜日は市が開かれる日だ。南区の野菜や肉を中心とした大地の市場に対して、北区の海の市場では港町近海で獲れた魚介類や貿易船が運んできた外国の名産品が並ぶ。

 中央通りは人、物、人でごった返していた。客引きの声が飛び交い、子どもたちの歓声があちこちから沸き上がり、女性の笑い声、交渉する男性の声がひとまとめになってヨワの耳に飛び込んできた。

 市場の人々は商魂たくましく、こんなに急いでいるクロシオやヨワも引き止めようと手を伸ばしてくる。客の間を縫い、商人の勧誘を避けつづけたヨワだったが通りを抜けた時にはチラシを三枚も持たされていた。クロシオはどうだったかと追いついて見てみれば彼はなんとタコを食べていた。

「試食品を突っ込まれた」

 もごもごと話すクロシオがこの様子では騎士も相当苦戦したことだろう。そう思って振り返ったが後ろにその姿はなかった。どうやら大柄な体格が災いしてまだ通り抜けられないでいるらしい。

 だがクロシオに構っているゆとりはない。ヨワは漁師に急かされて北門に駆けた。北門の馬繋場ばけいじょうには栗毛の馬が一頭、クロシオの帰りを待っていた。北門に馬を向けて先に乗ったクロシオの手を借りてヨワが後ろにまたがった時、ようやっと騎士が追いついてきた。チラシ五枚とゲソ焼きを片手に、口からタコ足を垂らしていた。

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