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「だから私をこの家に連れてきたの……? 私が悲しむ家族なんていないって言ったから」
リンのやさしさはうれしい。うれしいが素直に受け入れられない自分がいる。捨て子だったのに、自分と同じだったのに本当の家族と出会えたリンが羨ましい。そして心の底からどうしてと叫ぶ声がする。どうして自分のところにはそんな幸せが訪れてくれないんだろう。
ヨワは立ち上がった。ここにいると自分がまき散らす負のエネルギーで、暖かくてやさしさにあふれたこの家を汚してしまうと思った。本当はこんな黒い感情をこの家族に向けたくない。これ以上、醜くなんかなりたくない!
ヨワは込み上げる涙を歯を食い縛って堪え、腕をガリガリ掻きながら早足で玄関に向かった。リビングから「ヨワちゃん」とオシャマの声が聞こえたが止まらなかった。早く暗い場所でひとりになりたかった。
そうして泣いて、自分で自分を慰めて、眠れない夜が明けないことを願って、それから、それから――
「ヨワ! どこに行くんだ! 夜は出歩くなって言っただろ」
腕を掴まれて前に進めなくなった。強引に振り向かされて怒った顔のリンと出くわす。家の明かりは届かない場所にいるというのに、掴まれた腕から伝わる温もりが、ヨワを気遣う声が、まぶし過ぎた。
ああ。この人を私なんかに縛りつけてはかわいそうだ。せっかく光の下に出られたというのに。
「リン、お願い。任務を断って。私の護衛をしないで。私をっ」
私を忘れて。どうかより良い未来を掴んで欲しい。
ヨワはリンの胸にすがりつき、やさしい彼を想って肩を震わせた。




