表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浮遊の魔法使いヨワ  作者: 紺野真夜中
第3章 クリスタルの実
67/323

66

 飼い主がいるにも関わらず高い頻度ではちみつ入りミルクを飲みにやってくるネコをリンが抱え上げた。二週間と四日前からヨワの護衛として居座るリンとも顔馴染みだ。

 人慣れしているネコはヨワがはじめて出会った時からいくら触っても機嫌を損ねることはなかったのだが、リンには時々噛みついたり牙を剥いて威嚇したりすることがある。それもネコ特有の気まぐれで昨日は引っ掻いた腕に今日は大人しく抱かれているのだ。

 これがツンデレか。

 前にユカシイから教わった異性を魅了する高度技術の名前がヨワの脳裏に浮かんだものだ。お蔭でその技術は大いに効果ありとヨワの心のメモに刻まれている。なんせリンは引っ掻かれてもへらへら笑っていた。

 今日はツンデレのデレの日のようだ。ネコは機嫌がよさそうにしっぽをくゆらせて大人しくリンの腕に収まっている。「ミルクはあったかな」と微笑むリンの顔に、クリスタルの洞窟前で厳しい声と強く引き止められた感触を思い出した。

 どうして今なのかヨワにもわからない。だがそれはずっと考えていた違和感と結びつく記憶だと察した。そしてヨワは思いついた。

「嘘でしょ」

 資料室の扉を開けようとしていたリンがきょとんとした顔で振り返った。その間もヨワの唐突な思いつきはどんどん確信に変わっていった。

「ルルが誤って転落したなんて嘘」

 リンの腕から力が抜けてネコがひらりと床に下りた。

「ひとり歩きを覚える前に宙を舞う。それがホワイトピジョン家だもの。ルルがたとえ足を滑らせたとしても“落ちる”なんてあり得ない」

 リンは暗い表情で視線を落とした。その仕草はヨワの確信を肯定するも同然だった。ヨワの中に次々と疑問が湧き起こる。なぜ真実を隠していたのか。どうして義妹のルルは死んだのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ