63
それからヨワたちはダゲンから留守中のことを聞いた。伝書ハトの知らせを受けてコリコ国から五人の騎士が来たそうだ。彼らは見張りにふたりを山小屋に置いて周辺を見回りした。しかし怪しい人影も痕跡も見つからなかった。騎士はカカペト山中とふもとの町の警備を強化する準備が進められているとダゲンに伝え、ヨワたちが捕らえたふたりの盗賊を連れて山を下りていったそうだ。
「あたしたちは明日下山しちゃうけど、ダゲンさんはどうするんですか」
ユカシイは心配そうにダゲンを見つめた。
「今ここに留まるのは得策じゃないだろうなあ。いったん山を下りることにするよ」
それを聞いてユカシイは弾んだ声を上げた。
「じゃあ明日いっしょに下りましょうよ」
「実はそのつもりで準備していた」
ダゲンといつもより長くいられることに喜び振り返ったユカシイとヨワはハイタッチした。そこへ突然ロハ先生が大声を上げてイスから立ち上がった。
「あそこには貴重なクリスタルの実があるって王様に伝えなくちゃ。ダゲン、ちょっと伝書ハト貸して!」
ロハ先生はダゲンの返事を聞く前にハト小屋がある二階の階段を駆け上っていった。その姿を見送ったダゲンは神妙な面持ちであごに手をやった。しばし考えたあと、リンに視線を向けて口を開いた。
「貴重なクリスタルがあると知ったら王はあの洞窟に騎士を配備するよな」
「おそらく。それがなにか」
「そしたらこの山小屋は詰所にぴったりだ」
ヨワはふとダゲンの言わんとしていることに気づいた。
「もしかしてダゲンさん、騎士といっしょに山小屋に残るつもりです?」
山小屋の主はにやりと笑った。とたんユカシイが不満の声を上げる。
「なんだ。きみもクリスタルに興味を持っていたのか」
バナードが意外そうに言った。ダゲンは後頭部を掻き、あいまいに笑みをもらす。




