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リンの言葉をヨワはロハ先生に伝え、ロハ先生はユカシイとバナードに伝えた。リンが再びランプに火を灯そうとしたのでヨワは「だいじょうぶだよ」と言って手を青いもやに向かってかざした。ここからはもうランプは必要ない。
ヨワが魔力をあてると青白いもやは徐々に広がりはじめた。ユカシイも隣にやってきて同じように手をかざすと、もやは光となって速さを増し洞窟内を覆い尽くした。
リンの感嘆がこだまする。目の前に青白く輝くいびつな結晶が現れ、ロハ先生は絶叫した。
「ああよかった! 本当によかった! きれいに残ってる。どこも荒らされてない! いやいや、まだそうと決めるのは早い。さっそく前回のデータと比較しなければ」
ロハ先生は慌ただしくリュックを下ろし道具を広げはじめた。そのかたわらでリンはまだ呆然としている。見かねたヨワが声をかけた。
「これがクリスタルだよ。私たちはクリスタルの木って呼んでる」
「木? これが木なのか」
リンがすぐに飲み込めないのも仕方なかった。クリスタルは岩壁の中からまるでほうきのように細かな房を突き出していた。一見するとやわらかそうな曲線を一筋、一筋が描いている。その繊細さは鉱物のイメージからほど遠い。言うなれば葉の葉脈、菌糸を張り巡らせるきのこだ。
「これはほんの一部。見て」
ヨワは地面から天井に手を向けた。ヨワの魔力に呼応してそれまでなんともなかったそこが青白く瞬いた。
「このあたり一帯にクリスタルの根っこが張り巡らされているの」
「だからクリスタルの木。クリスタルって植物だったのか」
「あ、それは違うわ」
ユカシイがすかさずリンの間違いを指摘した。
「いや、すべてを否定することはできない!」
ノートとクリスタルを交互ににらめっこしながらロハ先生がさらに訂正を入れてきた。
「どっちなんだよ!」




