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浮遊の魔法使いヨワ  作者: 紺野真夜中
第2章 カカペト山
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 その間、リンとダゲンは納屋にいる盗賊にピザを持っていってあげたらしい。縛られているふたりは与えられるピザにひな鳥のように口をあけて首を伸ばし、おいしいとかしましく鳴きながら平らげたそうだ。ユカシイを襲った時も食べ物を寄越せと言っていたから相当腹が減っていたのだろう。盗賊にしては殊勝に何度も礼を言っていた、とあとからリンが話してくれた。

 ヨワとユカシイは楽しみにしていたカードゲームを広げてはじめたものの、登山と労働と盗賊の一件で溜まった疲労が出て一戦も終わらない内にふたりとも船をこいでいた。とても残念だったが今夜も大人しく就寝することにした。

 ところがヨワは寝袋に横たわろうとしたところで竜鱗病のぬり薬をぬり忘れていたことに気づいた。昨夜に見た甘い夢のストレスで腕を掻いてしまったから、今薬をぬっておかないと明日には悪化しているだろう。もうこのまま眠ってしまいたい誘惑をなんとか振りきって、ヨワはリュックから薬を取り出しそっと座敷から出た。

 玄関を出た脇にベンチがあったはずだ。そこで薬をぬろうと思ったヨワだが先客がいた。バナードが目を閉じて座っていた。両手の人さし指と中指と親指で輪を作りそれを絡めている。コリコの樹に祈りを捧げているとわかった。〈ナチュラル〉の人々はこうして一日の終わりに感謝と明日の幸福をコリコの樹がある方角に向けて祈る。この光景は城下町でもよく見られた。

 バナードの邪魔をしては悪いと思いヨワは裏口から外へ出た。上空は快晴だ。月が出ているので満天の星とはいかないが、でもそのお陰で明かりがなくても手元がよく見える。ヨワは積み上がった薪の前を通り丸太に腰を下ろした。

 貝の合わせを開き、乳白色のぬり薬を人さし指に取る。治癒魔法を代々受け継ぐレッドベア印の薬とはもう古いつき合いだ。その効き目はヨワが身をもって知っている。昼間に掻きむしってしまった患部に薬をぬり込めると、ふわりと花の香りが漂った。

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