45
今回ユカシイの魅了の魔法はカラスたちを呼び寄せたらしい。手を振ってカラスたちを散らすユカシイをバナードが興味深げに見ていた。
「こいつら山賊か?」
リンの声にヨワとダゲンは地面に伸びるふたりの男に近づいた。お世辞にも清潔とは言えない身なりに、よく日焼けした肌と手入れが行き届いていないひげ。リンの見解にうなずいたのはユカシイだった。
「そうよ。こいつらあたしにお金と食べ物を寄越せって言ってきたの」
「まったく。春になると虫のようにこういった輩が湧いて出てくる」
腰に手をあてため息をついてダゲンはリンに言った。
「伝書ハトを飛ばして騎士にこいつらを引き取ってもらおう」
「それがいいでしょう。さっそくお願いできますか」
すぐ小屋に引き返すと思ったダゲンはなぜかヨワを見てにやりと笑った。
「縄は持ってこなくてもよさそうだな」
ヨワの頬にさっと熱が灯った。
「ええ。よおく伸びてますから、縛るのは小屋に運んでからでだいじょうぶですね」
笑みを含んだリンの声にヨワは顔を上げられなくなった。たったひとりの友だちが恐怖に心の傷を負ったかもしれないというのに、謝りもしないで逃げ出すなんて許せない。あの時のヨワにはその思いだけだった。
でも落ち着いて振り返ってみればなんて乱暴なことをしたのだろう。自分の性格を考えると信じられない。リンとダゲンに狂暴で男みたいだと思われただろうか。笑われたのはきっとそうだ。
「ヨワ。悪いけどこいつらを運んでくれないか」
リンの言葉がここで終わっていればヨワはしぶしぶ手伝ったかもしれない。だが、つづいた言葉は今のヨワにとっては爆弾も同然だった。
「お前なら余裕だろ」
「全然余裕じゃない!」
「ええっ。だってお前さっき、いだあ!?」
リンの抗議は背中をぶって黙らせた。




