表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浮遊の魔法使いヨワ  作者: 紺野真夜中
後日譚 家
322/323

321

「困る! せっかくヨワがドレス着てんのに見れないじゃん」

「だからリンなら見ていいって言ってるのに」

「意味わかってないくせにそういうこと言うなバカヨワ!」

 ドレスを波音のように奏でてヨワの気配が遠ざかる。離れていれば、と浅慮が浮かんで瞳に彼女を映した。それはただの言い訳だった。

「心をもらえなくても、せめて体だけはって思ったことあるよ。ねえリン。私、そこまで子どもじゃない」

 気づけばソファーを乗り越えていた体を、リンは意思で床に縫いつけた。

「わかってて言ってるの」

「……ごめん」

「なんで謝る?」

 ヨワが窓に目を向ける。リンの足がその仕草に反応した。床板がギシリと抗議する。

「諦めてたの。その時も、今も」

「今も? なにを諦めた」

 心を隠すようにヨワが背を向けた。また一歩、意思が崩れる。匂い放つような魅力を漂わせてリンの鼓動を早めておきながら、ヨワは沈黙する。

「言って」

 声が上ずった。

「リンが、キラボシさんと浮気しても仕方ないって思ったの。ごめんね。ごめん……」

 うつむいた拍子に流れ星がきらめいて薄闇に吸い込まれた。ヨワが流した重力の渦に引きずられて抗えない。意思と欲望の衝突に震えながらリンは最後の一線で踏み留まった。

「諦めたから謝るの」

 ヨワは首を横に振った。銀の髪飾りよりも美しく、涙を湛えた瞳がきらきら揺れた。

「だって私、もう、リンを諦めることができない」

 抱き締めたい。嘘のように意思と欲望が重なり合った。繋ぎ止めるものが消えてリンはやわらかにヨワを包み込んだ。

「大した進歩じゃん。謝ることなんかないよ」

「許してくれるの?」

「むしろ俺はうれしい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ