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浮遊の魔法使いヨワ  作者: 紺野真夜中
後日譚 家
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320

 ひざに乗ったヨワの手を、リンの手が勝手に掴んでいた。彼女のあごを持ち上げて視線を自分に固定させているのは誰だ。頭の片隅で疑問が警鐘に変わる。

「ヨワ。もっときみを見たい」

 腕を掴み腰を引き寄せリンは、言葉とは裏腹にまぶたをぎゅっと閉じた。

「……あの、リン。なにやってるの」

 ひとつ低くなったヨワの声が不信感を伝える。リンの胸板を押して離れようとした。腰に回したリンの腕がすかさず阻む。その腕をリンはもう一方の腕で押さえつけた。

「ヨワ、なんかおかしい。なんかおかしい」

「うん。リン変だよ」

「そうなんだけどそうじゃなくて。俺の意思じゃないものが混じってる気がする」

「ああ。男の人って興奮するとそういう言い訳するらしいね」

「どこ情報」

「クチバ」

「兄貴はあとで締める」

 とにかくヨワには離れて、視界に入らない場所にいてくれと懇願した。そうでもしなければソファーに押し倒して腕に閉じ込めてしまう。リンはヨワが「いいよ」と言うまで、自分の腕をわし掴む痛みで必死に欲望を抑えていた。

「リン、だいじょうぶ?」

 ヨワがハンカチで首筋を拭く。そこではじめてリンは汗を掻いていることに気づいた。

「なんだろ。ヨワが魔法で俺をソファーに戻した時みたいな力を感じた」

 あ、とヨワがなにかに気づいた声を上げた。リンは思わず振り返ってしまい、慌てて顔を背けた。

「な、なに」

「このドレス、ユカシイが仕立ててくれたんだよね」

「まさか服に魅了の魔法の力が宿ってるのか」

「ユカシイってじっと見つめて魔法をかけるの。ドレスを縫ってる間もじっと生地を見つめるでしょ。だから、もしかしたら」

 リンは頭を抱えてがっくり項垂れた。

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