表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浮遊の魔法使いヨワ  作者: 紺野真夜中
後日譚 家
313/323

312

 パーティー会場は野外区にあるレッドベア家の別荘だ。根っこの橋を渡った先に馬車が列を成して停まっており、執事が招待状を確認して各組を案内している。

 リンとヨワも前の参加者にならって招待状を見せ、つつがなく馬車へ乗り込んだ。まるで王族気分だ。リンは自分も四大名家であることを忘れて、優雅なもてなしに感心する。ヨワは会場に並ぶ料理のことを話していた。とっさに思いついたごまかしだったが、だんだんと本当に空腹を覚えてきた。

 だがリンの脳裏に浮かんだのはまだ見ぬごちそうではなかった。

「ヨワのからあげ食べたいな」

「い、今それ? だってレッドベア家のパーティーだよ。一流シェフが作った料理に決まってる」

「そりゃうまいんだろうけど。あのからあげが本当にうまかった」

「今度はハンバーグを作ろうと思ってる、けど」

「マジか! やった!」

 思わず大きな声で喜んだ。ヨワは視線を下げて、リンはお手軽だなあと言う。

「ヨワはお嬢様育ちだもんな」

 ホワイトピジョンの両親と別居していたとはいえ、用意される食事は変わらず一流のものだったろう。しかしヨワは唇を引き結んで首を横に振った。

「オシャマさんの料理と、みんなで食べる料理のほうが百倍おいしいよ」

 リンはやさしく笑って、ヨワの髪が崩れないようにそっと触れた。

「俺もおんなじ。ヨワが作ってくれた料理だからおいしいんだ」

 瞬きひとつでヨワの目が潤む。その熱い粘度でリンを絡め引き寄せる。今になって彼女の唇に桃色の紅が差してあることに気づく。近づいたら甘くかぐわしいにおいがしそうだ。

 気づけばリンの手は輪郭をたどってヨワのあごに添えていた。腰が浮き上がる。上体が傾く。もう止められない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ