表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浮遊の魔法使いヨワ  作者: 紺野真夜中
第2章 カカペト山
25/323

24

「わかった。王には俺から伝えておく。きっとわかってくださるはずだ」

 ユカシイの意味深な答えをリンは素直に受け取ったらしかった。王にユカシイとの仲を報告されるとそれはそれで気恥ずかしいやら困る。と、リンを止めようとしたヨワの言葉をユカシイが遮った。後輩はすばやく「あの人を追い払うチャンスですよ」と耳打ちしてきた。

「それじゃああなたにもうヨワ先輩につきまとう理由はないわよね。さようなら」

 ひらひらと手を振るユカシイの態度は少しやり過ぎな気もしたが、ヨワはなにも言えなかった。王の命令で異性と、リンと、子どもをつくるなんてどう考えてもおかしなことだ。彼には申し訳ないと思うが、お互い不運に振り回されたのだ。

 ところがリンは気まずそうに頭を掻いて去る素振りを見せなかった。

「あー。そういうわけにはいかない、かも」

「はあ!? どういうことよ」

 不満をあらわにするユカシイの横でヨワは首をひねった。

「実は護衛も兼ねてるんだ。むしろ俺としてはそっちが本命で。ほら、ヨワは最後の継承者だからなにかあったら困るって」

「ゴエイ……」

 ヨワの中でほのかに光を帯びていた期待が崩れ去った。はっきり拒んでおきながらヨワのそばを片時も離れなかったこの二週間、もしかしてリンは考え直したのかしらと想像に胸をときめかせた夜は一度ではなかった。もしそうだったらと思うとリンの黒い目も黒髪も誠実で頼もしいチャームポイントに見えたものだった。コリコ国の騎士は品行方正だと他国の者でも知っている。それなら、彼に気があるのならたとえ命令だったとしてもありじゃないかしら。そう思って粗末な布団の上でじたばたと埃を立てていた。ユカシイには絶対言えない話だ。

 それがどうだ。彼の口から出てきたものは色気もへったくれもない、いかつい言葉だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ