表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浮遊の魔法使いヨワ  作者: 紺野真夜中
第6章 海
195/323

194

 何人か縦線が引かれ消されている。その中にシオサイ・ブルーウェーブの名があった。

「あいつは大人しい子で漁師に向いてる性格ではなかった」

 ヨワはハッと我に返り慌てて視線を戻して大じいさんの声に集中した。

「それをあの子は自分でもわかっていたんだろう。家業を継ぐことに悩みつづけていたが、結局父親に従って漁師になった。それが十四の時だったかな。今思えばそこからあの子の心はちぐはぐのまま成長してしまったんだろう」

 大じいさんは火掻き棒を手に取り、いろりに積もった灰を掻き回した。

「心がちぐはぐなやつの網は魚も見破る。やる気がないなどと仲間から怒られ次第にあの子は浮いていった。俺らはどうしても血の気が多いから、性根がよすぎるあの子には辛かっただろう。本当に、向いてなかったんだ。その頃少し荒れてたかな。たしか……十五、六か」

 なにもない灰の中を掻き回す火掻き棒の先を見つめてヨワは手を握り締めた。十五、六歳といえばヨワの年齢からさかのぼってちょうどシオサイとシトネが出会った時期と思われる頃だ。

 自分が本当に歩みたい道、上手くいかない苛立ち、仲間からの叱責、歩かされている今の道。それらが沈む沼に絡め取られ苦しんだシオサイを思う。自分の行き先と居場所を見失いかけたシオサイが、別の街からやって来た女性シトネに惹かれるのは難しいことではないように思えた。

「あの子がヨワさんの母親と出会っていたか本当のことはわからない。おそらく誰も知らんでしょう。当時は組からひとりはぐれ、両親とも不仲だった。そんな複雑で繊細な話ができる相手はいなかった。かわいそうなことだがな……」

 大じいさんは火掻き棒を置いて手を払った。そこへリンが少し前のめりになって口を開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ