184
「私お出かけってなるといつも荷物が多くなっちゃうの。ヨワちゃんがうちに来てくれたら本当に助かるわ!」
「母さんその話題はデリケートなんだから!」
ヨワを熱くハグするオシャマをリンはそう言ってたしなめ、ちらりと視線を送ってきた。ヨワは微笑みで応える。確かにオシャマに返す言葉はまだ見つからないが、彼女の明るくて暖かい人柄は十分に理解している。ヨワはそれよりも気になることがあり、オシャマの腕から解放されると潜めた声でリンに問いかけた。
「スサビはだいじょうぶかな。ほら、今将来のことで悩んでるって聞いて」
「ああ。だから連れてきたんだ。あいつにも気分転換が必要だよ」
スサビは軽くなった両手を突き上げてあくびをしている。ヨワは疑いの眼差しでもう一度リンに訴えたが、けろりとした答えが返ってきた。
「あいつは嫌なら絶対来てない。自分なりの楽しみ方を見つけられるやつなんだ。流れに任せてればいい。それよりヨワは自分のことを考えろ」
「シオサイさんのことでしょ。わかってるよ」
「ちーがーう」
額を軽く指先で弾かれてヨワは目をぱちくりさせた。
「この計画の第一目的がヨワの気分転換だってもう忘れてたな」
「そうでした……」
「そもそも気分転換の仕方知ってるのか」
「どうだったかな」
「頭をからっぽにするんだよ」
「なるほど。リンみたいに?」
「そうだ。俺のように、ってコラ!」
肩を怒らせ飛びかかるような構えを見せたリンから、ヨワは笑い声混じりの悲鳴を上げて逃げ出した。追いかけてくる手は簡単に避けることができた。彼も本気じゃないとわかるとますます楽しくなってきて、ヨワは束の間オシャマとスサビのことを忘れて先へ走り出した。
「なんだかんだ上手くいってるわよね、あのふたり」
「めんどくさいよ」




