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次の瞬間男の子はヨワに飛びついた。
「ヨワ! 僕に会いにきてくれたんだ! うれしい。大学に行ってもヨワいないんだもん。どこに行ってたの!」
ぴょこぴょこと跳ねて落ち着かないユンデの肩に手を置いてなだめる。ヨワはひざを折り視線を合わせ、ゆっくりと言い聞かせるように話した。
「あのねユンデ、私たち、あなたがその姿で会うのははじめてだよ」
ユンデはわかりやすくしまった、という顔で口を両手で押さえた。
「ちがうちがう! 僕はユンデの弟のユウだよ。ヨワお姉ちゃんの話はお兄ちゃんから聞いたんだ」
動揺からまたぴょこぴょこと忙しなく動くユンデに苦笑する。ヨワは身を寄せて男の子の耳に内緒話をした。
「ソゾロに変身していつもはちみつミルクを飲みに来ていたでしょう」
ひそひそ声に気を取られてユンデはようやく静かになった。
「なんだあ。そこまで知ってるの?」
肩を落とすユンデの後ろから女性がやって来た。以前、裏庭でやさしくユンデを抱き締めてくすぐりっこをしていた人だ。ベリーショートの髪はくるくると踊って女性が動く度にふわり揺れる。柔和な目元とユンデを見る暖かな眼差しも相まって、とてもおだやかに見える女性だ。
「私はこの子の母ウララです。どんなご用件でしょうか」
ユンデとの関係をどう説明したらいいか、ヨワが迷っている内にユンデが口を開いた。
「この人がヨワだよ、ママ」
ウララは目をまるくしてヨワを凝視した。
「えっ、あのガールフレンドの? でも……本当なのユンデ」
「そうだよ。十年後に結婚しようねって約束してるんだ」
会話の方向がまずいことになっていると気づいてヨワは慌てた。これではまるでヨワが小さな男の子をそそのかして不健全な交際を迫ったと思われてしまう。ユンデの言っていることが間違いではないことがさらに恐ろしかった。




