表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浮遊の魔法使いヨワ  作者: 紺野真夜中
第6章 海
170/323

169

 六月上旬。コリコ祭りから三週間が経った。ヨワはユカシイと護衛のリンを連れて、ベンガラとハジキが営む薬屋に来た。バナードに襲われた一件はヨワも気づかぬ内に心身にストレスを与え、竜鱗病の症状は悪化し湿疹の範囲が広がっていた。

 これに眉間のしわを深くしたベンガラはさらに強い薬を処方したが、強過ぎる薬は腫れや痛みなどの副作用を引き起こすとして慎重に使うよう何度もきつくヨワに言いつけた。そしてこれ以上の薬はないとも言った。

「薬に頼るのもよくありません。なにか気分転換ができたらいいのですけど」

 心配げに見つめるハジキの提案をありがたく受け取り、ヨワとユカシイとリンは薬屋をあとにした。

「気分転換ねえ」

「いい機会よ先輩! だって大学は自習という名の休講になっちゃったし」

 あれからロハ先生はヨワが無事退院するのを見届けて体調を崩した。バナードと友人のように親しかった先生には今回の一件は相当の衝撃だったと察する。そこへ追い討ちをかけてカカペト山への入山が当面禁止となった。盗賊の頭らしきカブトという人物とその手下たちもまだ捕まっていないのだ。

 ロハ先生にとってはまさに踏んだり蹴ったりだ。関心ごとに対する熱量が人より何倍も高い分、いったん途切れた時の反動が大きい。ヨワとユカシイが見舞いに家を訪ねた時は、気分不快による食欲不振と微熱があると言っていた。本人はこういった経験ははじめてではないらしく「だいじょうぶだよ」と笑っていたが心配は拭えない。

 心配といえば最近の騎士団はぴりぴりとした空気を放っていることも気がかりだ。カカペト山に現れた盗賊に加えて、王のひざ元である城下町で起こった事件。町人たちのささやき声が大きくなるにつれてシジマやエンジ、クチバの表情が険しくなっていった。カカペト山の警備に割いている騎士をさらに城下町の巡回に割いて、東西南北の門はよりいっそう厳しい目が通行人に向けられている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ