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ヨワは小さく礼を言って歩き出した。ユカシイが横に並んだのを見てから口を開いた。
「たしかに、私が行ってもきっと門前払いされると思う。でもルルは私とあの家の問題に関係ない。だからせめてお別れをと思って」
「あの、先輩と妹さんは義理の姉妹なんですよね」
おそるおそると聞いてくるユカシイに気にしてない、と微笑みを返してヨワはうなずいた。
「義理ってことは、その」
「父親とは血が繋がってないの」
「そうだったんですね」
「ルルは純粋でいい子だから、私のことお姉ちゃんって呼んでてくれたみたい。だけど実はほとんど会ったことがないんだ。今もどんな顔をすればいいのかわからない」
するとユカシイが半歩前に出てヨワの眼前で拳を握ってみせた。
「だいじょうぶ。先輩にはあたしがついてますからね。あたしが力になるわ!」
「ついてきてくれただけでもう助かってるよ」
にっこり笑って言うとユカシイは突然飛びついてきた。
「先輩大好き! 愛してる!」
いつもの言葉をヨワはいつものようにユカシイの背をやさしく叩いて受けとめる。竜鱗病のことがあり最初はあとずさっていたこの触れ合いも、ユカシイならば恐れることはなくなっていた。もしも正真正銘の姉妹だったらきっとルルともこうして触れ合えたはずなのに。
どうしてあの子が死ななければならなかったんだろう。代われるものなら代わってあげたい。
「旦那様と奥様はお会いになりません」
ホワイトピジョン家の屋敷の門で、ヨワとユカシイを出迎えた執事は開口一番厳しい口調でそう言った。いや、この場合はヨワを追い払いに来たのほうが正しい。予想通りの冷遇にユカシイが噛みついた。
「こんな大事な時でも意地を張るつもり!?」




