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蔵書の中身は小さい子どもが好む絵本からロハ先生のような学者が頼る専門書、はたまたススドイ大臣が時折確認に来る王族や国に関する密書までそろっている。もちろん密書はしかるべき身分証明書を提示しなければ書棚にさえ辿り着けないほど厳重に保管されている。大学教授助手では目にすることも叶わないが、ススドイ大臣が度々中央図書館を利用している姿はヨワも目撃したことがあった。
ヨワはユカシイとシジマを連れて中央図書館へやって来ると、正面の受付に座る老年の司書に会釈をして迷わず歴史書の棚に向かった。シジマが歩く度に装備の触れ合う音が静まり返る館内に響いた。祭りの喧騒を嫌って逃げて来たらしい学者風の男性がちらほらと険しい目をシジマに送った。図書館では騎士隊長という肩書きは通用しない。シジマは肩身が狭そうに背中をまるめていた。
「先輩、急になにを調べるっていうの」
館内は私語厳禁ではないがシジマのようににらまれては堪らないとばかりに、ユカシイは周囲を気にしながら口を開いた。ヨワはそれには答えず戦史が載っている本を棚から引っ張り出す。記憶ではそれほど古い話ではなかったはずだ。一番新しい戦争について書かれたページを開く。
「あった。これだ」
ヨワが指さす文章を左右からユカシイとシジマが覗き込んだ。
「コリコには四大名家が存在するでしょ」
「ホワイトピジョン、レッドベア、ブラックボア……。それに名を明かさない北区の名家」
ヨワは大いにうなずいた。
「彼らは滅多に記録には名を残さない。ここにも“影”としか書かれていない」
“和平調印式の謀略”と見出しがつけられた記事には先の戦時中、敵国が持ちかけてきた和平についての条約が記された文書に王が署名をしに出向くと、それは罠であったという事柄が書かれている。




