表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浮遊の魔法使いヨワ  作者: 紺野真夜中
第5章 コリコ祭り
154/323

153

「あんな男が相手ならあたしは愛人になんて収まってられないわ。寝取ってやる!」

「黙ろうかユカシイ」

 しかし冷静でいられないのはユカシイだけではなかった。シジマが涙と鼻水を流してヨワの腰にしがみつきわんわんと泣き出した。「どうしてリンじゃダメなのか!」「息子に、息子に、失恋の痛みを負わせてしまうなんて!」と、まるで自分が失恋したかのように巨体をさめざめと震わせる騎士隊長に、さすがのヨワも言葉がない。その隙にユカシイはまたユンデの文句を唱えはじめた。

 もう全部投げ出したい。

 シジマの鼻水が服についているのを見てヨワは天を仰いだ。その瞬間、突然記憶の引き出しが開いた。

 ソゾロの前でヨワは鼻水を垂らして泣いていた。夜だった。周期的にやってくる負の感情に蝕まれて、過去の辛い思い出や未來を描いている内にあふれ出したのだ。そばにははちみつミルクを飲みに来たソゾロだけがいて、ヨワはなにもかもをネコに話した。「こんなことを言えるのはきみだけだよ」とすがった。ソゾロは不思議と大人しく伏せてヨワの目を見つめていた。ヨワが話し終わるまでその場を動くことはなかった。

 きみは本当にやさしいね。イケメンだね。ありがとう。

 私もネコになりたい。そんな童話があったね。私だったらそのままネコの王子様と結婚するのに。

「ネコになる魔法……。いや、違う。たしか……」

「ヨワ先輩、どうかしたんですか」

「中央図書館って今日もやってるよね」


 コリコの中央区には樹上の城と騎士の詰所とあとひとつ、中央図書館の建物がある。図書館はコリコの幹をぐるりと囲む円形で、どの区域からも利用しやすいようになっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ