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「どうして知ってるの」
「ヨワが話したからだよ」
「うそ。私そんなこと話してない」
病はなにかの拍子に湿疹を見られることはあっても、家庭の事情はごく一部の者しか知らない。その内ヨワが直接話をしたのはベンガラとハジキ、そしてリンだけだ。ロハ先生とユカシイは人伝に聞いたりヨワの様子で察したりしてくれた。
「まさか盗み聞きしたの」
「そんなことしてない。ヨワが僕に話してくれたんだ。僕にしか話せないって」
何度言われてもヨワには身に覚えがない。ユンデに対し疑心が生まれたところに、彼は慌ててつけ加えた。
「あのねあのね。ヨワは気づいてないと思う」
「はあ? 私が知らず内にそんな話するわけないでしょ」
「でも信じて! 僕は誰にも喋ってないよ。だって僕とヨワの秘密だもん」
その言葉には聞き覚えがあった。ヨワが誰かに向けて言ったものだ。いつ、どこで、話していたのか思い出せない。それは目の前のユンデではないことは確かだ。けれどヨワはなにかを見落としている。
「僕はヨワの味方だよ。そう決めたんだ」
ヨワが目を見るとユンデは気恥ずかしそうにそっぽを向いた。わからないことだらけだ。ユンデが信用に足る人物かも判断できない。だが彼が悪人とは到底思えなかった。
「でも最近のヨワはリンとばかりお喋りしててつまんない」
ふと文句を垂らしたユンデにヨワは苦笑を隠しきれない。一体彼の情報源はどこから流れてくるのだろうか。ヨワはもしかしたらユンデもなにかしらの魔法使いかしらと考えた。たとえば遠くにいる人物の言動を見聞きできる魔法だ。そんなものがあるとは聞いたこともないが。
「ねえもしかしてさ、ヨワってさ、リンのことが好きなの?」
肩が跳ねるほどの動揺をヨワは咳でごまかした。
「なんで急にそうなるの」




