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彼はどう見ても同い年か、年下でもひとつかふたつくらいしか離れていないように見えるのに、どうしてもユカシイ以上に庇護欲に駆られ世話を焼きたくなってしまう。またユンデもどんなヨワの気回しも好んで受け入れた。大人の男性らしくリードしようとする姿勢は見せるものの根本的な性格が子どもっぽいのだ。そのせいかヨワは人生初の異性とのデートだというのにちっとも緊張していない。男性に対しては不信感を抱きながら惚れっぽいという難儀な性質を持つヨワにとっては大変珍しいことだった。
もしかしてうんと小さい頃に会っているからかもしれないと思い、ヨワは問いかけた。
「ねえ。ユンデはどこで私のことを知ったの。いつから?」
「大学だよ。うーんと、一年くらい前?」
あてが外れた。ますます謎が深まる。
「僕はヨワのことならなんでも知ってるんだ」
「なんでもって……」
ハタと思い当たる。ヨワは食事をはじめる前に口布を外した。フードはかぶったまま横髪でなるべく頬を隠したが、正面に座るユンデには湿疹が見えているはずだ。しかしユンデはなにごともなかったかのように食事に手をつけた。そのあとも話題にしなかった。それは彼の気遣いだと思っていたが、もしかしたら最初から知っていて驚くことではなかったのかもしれない。
だがヨワは確かめられなかった。やはりどうしても病のことを自分から話すのは気が重い。どんなにのどの調子がよくても声が出てこない。相手が見て見ぬふりをしているところに手を突っ込んで掻き回す真似はしたくなかった。
ふいにユンデの楽しそうな笑い声が聞こえた。
「不思議そうな顔してる。だいじょうぶ。あとで話してあげる。僕はちゃんとわかってるからね、ヨワ」
いちごをひと口で食べてユンデは目を細めた。




