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歌い終わるとマンジがすかさず「もう一回」と人差し指を掲げた。辟易としたシオサイは変わらず離してもらえない。酔っぱらいには関わりたくないのかロハ先生とリンは遠目に見ていた。ところがユカシイは歓声を上げて酒くさい輪の中に飛び込んでいった。酒に強いとは聞いたが飲んだあとも素面と同じとは確かに言っていなかった。
止めるべきか迷うヨワの視線の先で、ユカシイはズブロクと肩を組みぴょこぽこ跳ねている。なぜかわからないが繋がっている四人はそのまま回りはじめた。シオサイの戸惑う声だけが置いてきぼりだ。あれは止められない。ヨワは悟った。
横で笑っていたススタケは、再び声を潜めてヨワの耳にささやいた。
「バナードってやつのことは兄貴たちに話して調べてもらう。ヨワ、お前も気をつけろよ」
ススタケの緑の目を見上げてヨワは首をかしげた。
「なにが狙いか知らないがどうやら庭番に用があるみたいだからな。ヨワももう庭番の仲間。俺たち根っこの家族だろ」
にっかりと笑ったススタケの表情と言葉を一生忘れないだろう。全身を駆け巡った震えるほどの喜びとともにヨワの心に刻みつけられた。ふわふわと浮かれて陽気な声で響き渡る庭番の歌をヨワはとても気に入った。
「それならあの歌覚えなくちゃ」
「よっしゃ。俺たちも混ざるぞ!」
ススタケの大きな手がヨワの手を包み輪の中へ引っ張った。




