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「〈ナチュラル〉ねえ。庭番に〈ナチュラル〉のやつは入れないんだが」
「そうなの?」
ヨワは意外に思った。〈ナチュラル〉は自然を尊び愛する思想だ。中でもコリコの樹のような巨木は神として崇めている。コリコの樹を思い、人知れず守る庭番に〈ナチュラル〉ほど適した思考の人物はいない。ヨワにはそう思えたのだが、ススタケはあごに手をやってゆるく首を横に振った。
「ダメなんだ。俺たちはコリコの樹を守るためにこうして幹をくり貫いて薬品を使ってる。〈ナチュラル〉のやつらにとっては言語道断の行為だ」
ススタケの話を聞いてヨワはバナードが農園の野菜には手作りの肥料や防虫剤を使っていることを思い出した。人が魔法で作り出した薬は一切使用しない。すべて自然の材料で手間暇をかけたものでないと納得しないとバナードが話していた。その強いこだわりは彼が〈ナチュラル〉だからこそだと感じたのを覚えている。
「それなら私の勘違いだったのかな」
「いや。庭番になってから考え方が変わった可能性もある。黒髪っつうのもシオサイしかいねえが、まあそっちも変装かもしれねえからな。全員に探りを入れてみる」
そこへにわかに歌がはじまった。酒タルのそばですっかり酔っぱらったズブロクとマンジが嫌がるシオサイを巻き込んで肩を組み、思うままのテンポで歌詞を口ずさむ。どうやら庭番がテーマの歌らしい。それはこんな歌詞だった。
俺たちゃ庭番 ヘッジホッグ ヘッジホッグ
長いツメも 大きなキバも 必要ない
虫ケラと同じ 地を這って コリコを守る
羽をトゲに変え 声に耳傾け 庭を守る
できないことは誰かにお願い
知らないことはみんなで考える
それが俺たち ヘッジホッグ ヘッジホッグ
根っこの家族




