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庭番の説明と互いの自己紹介を終えて開口一番にススタケはそうつぶやいた。
「ま、まさかスオウ王の実弟なんてえ」
リンはススタケの自己紹介を聞いて衝撃から立ち直れないでいた。
「気づかないで剣向けたなんて騎士失格なんじゃないの?」
容赦なくユカシイが追い討ちをかける。リンの肩がびくりと跳ね上がった。
「俺はここで庭番の長やって、政も行事も全部兄貴たちに丸投げしてるから無理もない。俺も外のことには疎いんだ。気にすんな」
「疎いっていうか雑なんですよお長は」とズブロク。
「話もだいたい聞いてねえしな」とマンジ。
「そうですよ。浮遊の魔法使いの後継者問題だって、ススドイ様から策があるとしか聞いてないんですから。信じられません」
シオサイがつづけた不満のあと、一拍の間を置いて庭番の面々の目がヨワに集中した。ヨワは明後日の方向を向いた。今さらながら任された役目の大きさを自覚した。国家の安全に関わる問題への対策が自分だなんて名乗り出る勇気はない。日々、縁の下の力持ちとしてコリコの国を守りつづけてきた庭番を前にしたらなおさらだ。
ヨワは真の問題を目の当たりにし、その責任をきちんと理解した今もまだスオウ王の命に戸惑いを捨てきれていなかった。
「若い、浮遊の魔法使い」
「絶対そうだ」
「歳いくつ? 相手はいる?」
「もうほっといてください!」
自分の恋愛が大勢の人々に注目される日が来るなんて思ったこともなかった。ヨワはフードをかぶって視線から逃げた。
「よし。歓迎会を仕切り直すぞ。リンもユカシイも酒を飲める歳だろ? 同じタルの酒を分けて飲み交わす。そうやって俺たちは絆を結ぶんだ」




