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やる気のない「おう」という返事とまばらな拍手が起こった。ススタケは次に庭番の仲間をヨワに紹介した。はじめに指をさしたのは床から出てきた男性だ。
「このタンクトップのダミ声のいかついおっさんはマンジ・グッドリーフ。野外区の庭師だ」
マンジは片手を挙げて応えた。スキンヘッドにねじりはちまき、黒々とした眉が特徴的な彼はしっかり日焼けした肌色も相まって頑固そうに見えた。
「そんで正面にいるひょろいのが、毎度お馴染み赤クマ印の薬師ズブロク・レッドベアだ」
「どうもお」
間延びした口調に無気力な表情とは裏腹に、ズブロクの髪は真っ赤でワックスをぬっているのかツンツンと逆立っていた。服装はやはり作務衣だがベンガラやハジキと違って派手な黄色に染まっている。マンジは五十代といったところだが、ズブロクはまだ若く三十代に見えた。
「そしてこの中では一番の新顔、ヨワからすればひとつ先輩にあたるシオサイ・ブルーウェーブだ。植物学者を目指すために港町から移住してきたんだ。今は東区イルミナル大学に在籍してる」
「はじめましてヨワさん。よろしくお願いします」
シオサイは礼儀正しく握手を求めてきた。黒い髪は短く整えられ好印象を受ける。青い目はおだやかに光を湛え口元はやわらかくはにかんでいた。大学に在籍している、と言ったがシオサイは若くても四十代に見える。しかし仕事のためや退職後の生きがいとして後々に大学入学する者は珍しくない。
ひと癖もふた癖もありそうな庭番の中では一番親しみやすそうな彼がひとつ先輩でよかったとヨワは安堵した。
「って違う違う! 私庭番になるつもりはないから」
「なに言ってんだ。ホワイトピジョ……あー、ただのヨワか。とにかく浮遊の魔法使いはもれなく庭番の仲間になる。それが決まりで務めってやつだ」




