表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浮遊の魔法使いヨワ  作者: 紺野真夜中
第4章 告白と王子
117/323

116

 ふたをして心の奥底にしまい込んだ箱に入れた最後の残骸を手に取る。それは最も嫌悪するべきものであり、希望でもあった。

 眼下に外階段を見つけた。コリコの太い幹をぐるりと迂回して作られたそれは城から伸びて別の場所に繋がっているようだった。ヨワはなにも考えず魔法でバルコニーから外階段に下りた。そこからは城下町がよく見えた。手っ取り早く城から出られる。

「ヨワ?」

 声がした。だから振り返った。外階段に立つリンがいた。この先は騎士の詰め所か。なんてどうでもいいことを考えた。気がする。ヨワは階段から身を乗り出して手すりを蹴って宙に飛び出した。リンの騒がしい声に引き止められた。

 うるさいよ。もうほっといて。

 城下町にそっと降り立ったヨワを通行人が見ていた。城を振り返ることなくうつむいて歩き出す。このまま南門からとにかく早く街を出て、そのあとは海岸に行こうと思った。海に沿ってとにかく歩いていくのだ。そうしていつか動けなくなってなにもわからなくなる。ヨワがどこにいていつ死んだのかもわからなければ、ロハ先生やユカシイが悲しむことはない。死体を煩わせることもない。

 いつかの夜に立てた計画通り。死を思うと不思議と心おだやかになれた。そんな自分が壊れていることなんてとっくに気がついていた。ちゃんと生きようと思ってもできない。出来損ないの見た目通りの変人。それが私。

 ルルさえ生きていれば王が注目することなんてなかった。リンやシジマ一家と出会うこともなかった。それらの出会いはすべて間違いだ。正しくはヨワが殺されてそこからの筋書きはきっと全部ルルのために用意されたものだった。だからうまくいかない。ヨワじゃうまくいきっこない。

「ちょっと待ってくれお嬢さん」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ