表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼シェフと愉快なレストラン  作者: ただっち
第1部:秋月一族編
47/48

魔王退治は勇者にやらせてよ!

 相変わらず無茶なこと言う母親だと思った。

 だから俺はこの人が苦手なんだ。

 昔からありえないことを言ってくる人だった。

 右を見ながら左を見ろとか、谷から突き落として這い上がってきた子を育ててやろうとかライオンの真似をして谷から突き落とそうとしたり――――むちゃくちゃだ。

 

 「いや無理でしょ……魔法も使えない普通の人間だよ? 無理無理……」

 「でもあなたには、翔琉と私……二人分の力が備わっている。 それは、君も感じたんじゃないかしら? 白猫くん」

 

 と、ザクロの方をディルは見る。

 ザクロは確かに……と言うように、こくりと頷く。

 

 「その子は僕の呪いの力を弾き飛ばした……つまり、彼の持っている能力は」

 「魔法や呪いといった類いを退ける強い耐性……それが、あなたが生まれ持っている力よ。その証拠に……」

 

 えいっと、母親は俺を結界の外に突き飛ばした。

 ずてっと顔から転んでしまった。

 

 「痛いよ、なにするんだよ!!」

 「ほらね……時間が止まらない」

 「「!!」」

 

 確かに、他のみんなが停止するこの空間の中を俺は平然と動けている。

 

 「迅雷にそんな力が……」

 「そそ。 だから、迅雷ちゃんは……」

 「僕もいく!!」

 

 と、唐突に楓博士から楓くんへと戻った小さな狼獣人はピョンと俺の方へ飛び付いてきた。

 

 「「楓!!」」

 「ん? おとうしゃん、呼んだ?」

 

 と、嬉しそうに尻尾を動かしながらニコニコと楓くんは笑っていた。

 

 「そっか……なるほどね……」

 

 と、ディルは頷いた。

 

 「楓博士は迅雷ちゃんに生まれ変わっている。 そして、楓くんは楓博士のクローン……つまり、二人は楓博士の存在でリンクしている……だからこそ、迅雷ちゃんと同じ力を楓くんは宿していると言うわけか……」

 

 いや、納得されても……どうするの。

 非力な人間と小さな狼獣人で魔王退治って……馬鹿なの?


―――――


異世界……と言うのは、どういうところなのだろうか。

 そう俺と楓は、各々が描いていた。

 俺の場合は、宝石が溢れる洞窟。

 楓の場合は、草原広がるファンタジー。

 しかしながら、この二人の抱いていたこととは違う世界が広がっていた。

 

 「楓くん……」

 「迅雷しゃん……ここ、なんだろうね」

 「うん……」

 

 そこは、宇宙のような世界。

 星が道となり、あまねく惑星たちが中央の太陽に寄り添い輝く世界。

 

 「宇宙みたいなのに、空気はあるんだね」

 「そうですね……お星さまキラキラしてて綺麗なのに……なんだか、寂しそうです……」

 

 この世界のどこかに……雷オーナーが。

 

 「迅雷しゃん、雷おじちゃん助けられるよね?」

 「うん……どうにか俺たちが探し出せば……」

 

 というのも、ここに入る少し前の話だ。

 ディル=トキヨミ……俺の母親は封印の儀式をレオたちと準備すると言う。

 

 「時空魔王インフィニティを封じる儀は私たちで進めておく。 迅雷ちゃんと楓くんは、翔琉と一緒に時空魔王インフィニティ……いえ、雷くんをここまで連れてきてちょうだい」

 「連れてくるってどうやって……」

 「雷くんは、小さい子が今でも好きよね?」

 

 そう言って周りにお母さんは確認をとる。

 迅凱仙のメンバーは、全員が同時に頷いた。

 

 「楓くんはともかく……あんたも、小さい頃に戻ってもらうわね」

 

 そう言ってお母さんは、俺の方に向かって魔法を放つ。

 そうすると、ポンッと言って俺の身体は小さい姿になった。

 というより、これって小学生の時の……。

 

 「ひゃ!!」

 「「かわいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」」

 

 思わず、レオや紅葉や彼岸たちからそんな歓声がでる。

 

 「お母さん、何てことを……」

 「この頃の迅雷ちゃんはね少しやんちゃで手を焼かしたものよ……」

 

 と、昔懐かしく物思いに耽っているお母さん。

 いや、だからそれどころじゃないって。

 

 「その姿なら、雷くんは犯そうと追いかけてくるはず……それでどうにかこちらの世界まで……」

 「ちょっと!! 息子が犯されてもいいの、お母さん!!」

 「大丈夫よ、ちょっとおしりがヒリヒリするだけだから」

 「そんな虫さされみたいなことにはならないでしょ!! というか、俺たち餌だよね!! 完全に魔王を引き寄せる餌だよね!!」

 「さあ、行ってくるのよ!! 息子よ!!」

 「話を聞けぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 と言うことがあったんだ。

 だから俺の姿は今……。

 

 「はぁ……なんで、こんな姿に」

 

 ピョコンと昔からのアホ毛は変わらず、この時お父さんの真似をして首元にマフラーを巻いてたんだっけ。

 そして、服装は何故か……。

 

 「迅雷しゃん、なんか格好いいですね」

 「はぁ……楓くん……言わないで……」

 

 何故か執事服を着ている俺であった。

 この時、たしかお父さんとお母さんがスーツ系に着るのにはまっていて、結果として行き着いたのがこの服装だ。

 

 「普通、自分の息子に執事の格好させるかって!!」

 「大丈夫ですよ、迅雷しゃん……まだ……ましですよ……」

 

 なんだ楓くん、その含みのある言い方は。

 

 「さあ、先を行きましょう」

 「行きましょうっていっても、どこに向かえばいいのやら……」

 

 と思ったのだが、やけに輝きを増している星があった。

 その光の閃光は止めどなく、輝きを放ち、爆発と破壊を繰り返していた。

 

 「……あそこかな?」

 「……あそこですね……」

 

 お父さん……派手に暴れてるな。

 雷オーナー、無事でいてくれるといいんだけど。

 

 「よし、楓くん向かうよ」

 「あ、はぐれないようにお手て繋ぐです」

 

 こんな魔王退治……見たことねぇよ。

 幼児による囮作戦って……。

 色々なところから苦情来てしまいそうだぜ。


――――――


 【一方、魔王城では】

 

 閃光に次ぐ閃光……。

 おびただしい光で満ち溢れ、到底魔王がいる城とは思えないほどに光輝いていた。

 

 「はぁ……はぁ……」

 

 この城の主、時空魔王インフィニティは消費していた。

 体力も、気力も……なにもかも。

 

 「どうしたのかな、魔王インフィニティ……そんなもんじゃないでしょ?」

 

 悠然と光を纏って現れるのは、絶対的な力を持つ男……天野翔琉。

 雷オーナーが唯一苦手としている某大学の教授だ。

 

 「おのれぇぇ……」

 「ふふっ……魔王インフィニティ、お互い全盛期から程遠いとはいえ、随分と弱くなったもんだね」

 「ダマレ……オマエガコノオトコヲ魅了シナケレバ……」

 「まあいいや……それより、魔王……早く、雷くんを返してもらうよ!!」

 

 そう言って天野教授は再び、閃光を放ちながら魔王へと立ち向かうのだった。

 というより、これだと魔王をいたぶってるんじゃないですか―――――。


―――――


暗がりの中、俺たちは進む。

魔王となってしまった―――否、魔王に戻ってしまった雷オーナーを元に戻すために。


「迅雷しゃん――僕疲れました」

「そうだね、少し休憩しようか」


あれから数時間も歩きっぱなし。

目の前に見える魔王の城―――されどその道なりは長かった。

未だ鳴りやまぬ閃光と爆音を響かせ、その激闘を物語るように。


「迅雷しゃん、おにぎり食べたいです」

「うーん……はい、これ」


楓くんはお腹が極限まで空いてしまうと泣き始めて動かなくなってしまうから。

こうして適度におにぎりを与えないと。


「あ、これはお父しゃんが握ったおにぎりです」

「へえ、なんでわかるの?」

「僕の好みの塩加減なのです」

「あ、そうなんだ」

「あんまりしょっぱいのは食べちゃダメってお父しゃんに厳しく言われていますからね」

「ハスキー先輩はしょっぱいの好きだけどね」


よくお酒のつまみに~なんて調子のいいこと言って、イカの塩辛とか塩分多めのフライドポテトとか食べてるからな。

それでも身体に異常が出ないのは、ハスキー先輩の特徴である不死性のある回復力のおかげなんだろうけどね。


「魔王城はいつになったらたどり着けるのかな」

「もしかして、何光年も離れた場所にあるとか?」

「ええ―――‼」


いや、でも十分にあり得る話だ。

魔王の城というのは実は惑星規模のデカさで、さらに言えばあの閃光や爆音はかなりの規模の戦闘である可能性も無きにしもあらずだ。


「そんな、何光年って光の速度で1年かかるってのが光年の計算基準であるんだから、今のペースだったら何千年と時間がかかっちゃうよ」


正直、元の大きさの身体でさえそんなに早くは動けない。

どうすれば―――。


『お困りのようだね、2人とも』


と、不意に現れたのは霊体姿の楓博士だった。


「わあ、僕しょっくり」

「ふふっ、そうだね。まあ、君と僕は同じ存在であるからね―――そして迅雷君も」


秋月楓―――この人物が死んでいなければ、俺もこの楓くんも存在することは無かっただろう。

俺の前世であり、楓くんの生みの親でもある。

そして死者となって俺と楓くんをリンクさせている人物。

だからこそ、こうして俺と楓くんは魔王インフィニティの時間停止状態であるこの空間でも自由に動くことが出来るのだ。


『もう、こんな時こそ僕の知識の出番でしょ。 迅雷君』

「え?どういう事?」

『僕の英知ともいえる知識―――あらゆる事象について解析し、使用できる僕の知識を保有している君なら使えるはずさ』

「だから、何を―――」

『魔法―――それと陰陽術も。 僕の知るものならすべて使えるはずさ』

「そ、そんなこと急に言われても―――」

『思い出せ迅雷―――君は誰の生まれ変わりであるかを―――』


そういうと、楓博士の霊体は再び姿を消した。

今のはなんだ?

幻覚?


「迅雷しゃん、魔法使えるですか?」

「うーん――試したことは無いんだけどね―――」


でも、可能性としては十分にある。

何せ両親が魔法を使えるのだ。

それもチート級の魔法を。

それを俺が使えても、遺伝としておかしくはない。

でも、魔法ってどうやって使うんだ。

どうやって――――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ