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狼シェフと愉快なレストラン  作者: ただっち
第1部:秋月一族編
44/48

信念がある限り、僕らは絶対負けない

【シロン&レオvsザクロ】

 

 魔法と呪術。

 両者の力は均衡していた。

 シロンには致命的な弱点がある。

 それは、巨大な魔力のため攻撃魔法を連発すると直ぐにバテてしまうということ。

 逆に、レオは魔力は全盛期より落ちているため、一撃の威力は低いが長年の経験により持久力はある。

 故にこの二人のコンビの相性は非常に良かったりするのだ。

 

 「魔銃レグルス!!」

 「魔力強化(マジックアップ)付加(エンチャント)

 

 魔法の銃弾がザクロに被弾する。

 

 「くっ……厄介な」

 

 ザクロの白い毛並みがすっかりと真っ赤になり始める。

 

 「どうだザクロ!! お前がこれまで呪い殺してきた者たちの痛みはそんなものじゃないんだぞ!!」

 「実際に痛かったしな……」

 

 経験者レオは語る。

 実際に今でもなお呪いは受けていることだしな。

 

 「ふふっ……どうやら、甘く見ていたようですね」

 「!! レオ、警戒しろ!!」

 

 思わずシロンは大きな声を出す。

 ザクロがシュルッと、右目の包帯を取ると、そこにはシロンと同じ青い目があったのだ。

 

 「オッドアイ?」

 「気を付けろレオ……ザクロは普段呪術を強化して使うために魔力がこもった右目を封印している。 だから、右目が解放されたということは……」

 「魔法も呪術も使い放題♪」

 

 その瞬間、黒い塊がシロンたちの周りに浮かび上がる。

 

 「暗黒点(ブラックポイント)

 

 その黒い塊に触れた壁は、みるみると侵食されチリとなって消えた。

 

 「黒魔法か……」

 「呪術士にして黒魔導師……それがザクロだ」

 「さあシロン、白魔法で吹き飛ばしてごらんよ」

 「言われずとも!! 白き息吹(ホーリーブレス)!!」

 

 黒い塊に、シロンが光の風を巻き起こし、相殺させていく。

 

 「さすがはシロン♪ 難易度の高い光属性を意図も簡単に放てるだなんて♪」

 「はぁ……はぁ……」

 「相変わらずの燃費の悪さだけどね」

 「シロン、大丈夫か?」

 「すまないレオ……少し時間を……その間に魔力を回復させるから」

 「よし、任せろ」

 

 ガチャリ、と魔銃レグルスをレオは構える。

 そして、その銃を今度は両手剣に変形させて突進する構えを見せる。

 

「どうする?獅子」

 「俺を舐めるなよ、子猫ちゃん」

 

 じりっと、足をゆっくりと動かし、ザクロに無謀にも近づいていく。

 

 「~♪」

 

 しかも口笛を吹きながら。

 

 「!! お前こそ、僕を舐めるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 そう言ってザクロは先程の黒い塊を放っていくが、レオはみるみる切り刻んでいく。

 

 「~♪」

 「おのれぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 そして、すかさずレオはザクロに近づき、一太刀浴びせる。

 

 「居合い奥義……獅子座流星群(ししざりゅうせいぐん)

 

 ズバッと腹を切られたザクロは、どくどくと流れ出る血を眺めてふふっと笑っていた。

 

 「あはは……快感……だけど、無駄死になんかしないからねぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 と、ザクロは血をレオに向かってかけようと放つ。

 が、それはレオに当たる前に蒸発して消え行く。

 

 「なんだこれは……」

 「……邪なる存在にて、盟約を……」

 

 気づくとシロンがなにやら本を開いて詠唱をしていた。

 

 「や、やめろ……シロン!! そんなことしたら、僕の闇の力がぁぁぁぁぁ!!」

 「……明星なりて、破邪の力与えん……」

 「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 「聖邪光纏(せいじゃこうしん)!!」

 

 本から放たれる夥しい光が、ザクロを突き刺し、黒い気配が抜け落ちる。

 そしてザクロは気を失ってその場に倒れてしまうのだった。

 

 【シロン&レオvsザクロ】

 

 【勝者 シロン&レオ】


―――――


【ハスキー先輩vs白神狼牙】

 

 白神は怒り狂っていてハスキー先輩の話は聞きそうにない。

 だから、ハスキー先輩は真相を話そうにしても話せないのだ。

 あの時、楓を殺したのは水無月だということを……。

 だが、間接的とはいえ関与したことは嘘とは言えない。

 薬の作用で幻覚を見せられ、楓を傷つけてしまったことは変わりないのだから。

 

 「殺し屋ぁぁぁぁぁ!!」

 「くっ!!」

 

 白神はまるで無尽蔵とでも言うべきほどに、スピードもパワーも落ちる気配がなかった。

 そりゃあ、ハスキー先輩は不死性が備わっているとはいえ体力には限界がある。

 特に現役を退いていたわけだし、本職で毎日訓練漬けの忍相手に遅れをとるのは当たり前なのだ。

 だが、そこを経験と感でどうにかしてしまうのがハスキー先輩なのだ。

 

 「楓様に懺悔して死ねぇぇぇぇ!!」

 「楓……俺は……」

 

 ドスッ……と、白神は初めてハスキー先輩に一撃を喰らわせた。

 それは、みぞおちにクナイが突き刺さる程の強烈な一撃だった。

 しかし、ハスキー先輩にとってはそれこそが白神を誘うための罠だった。

 

 「っ!!」

 「捕まえた!!」

 

 ハスキー先輩はガシッと白神を拘束した。

 忍と言えど、縄脱けは得意かもしれないが……では、殺し屋に捕まった時に抜ける方法だなんてのは知らないのだ。

 

 「放せぇぇ!!」

 「話を聞け白神!!」

 「殺し屋ぁぁぁぁぁ貴様が楓様を……!!」

 

 見るとハスキー先輩はポロポロと溢れ落ちるように涙を流していた。

 ようやく気づいた白神の怒りはみるみる鎮静化していった。

 

 「なんで……お前……」

 「話を聞いてくれ……頼む……」

 

 拘束しながらも、ハスキー先輩がぎゅっと抱き寄せるこの様は……と、白神は大好きなあの人のことを思い出していた。

 

 「楓は……水無月に殺された」

 「水無月……あの、水無月グループの?」

 「楓が持っていた不老不死に関する研究が欲しかった……それと、俺が目的だったんだ」

 「はぁ?」

 「俺は水無月によって改造された生物兵器……検体01号という名前だった」

 「!!」

 「俺の師匠……雷オーナーは、楓に私語とを依頼する仲で、ある日俺は楓と紅葉を警護する仕事を与えられた」

 「……」

 

 白神はその話をじっと静かに聞く。

 

 「殺し屋として育ってきた俺にとっては甘ったるい任務だった。 けど、どんな任務よりも楽しかった。 楓と同い年だったし、いろんな話をしたもんだ……次第に俺はそんなあいつに牽かれていった」

 「……その気持ちは判る気がする」

 「だけど、水無月が楓と俺を狙って襲ってきた……必死に守ろうとした……でも、守れなかった……楓は死に際に生まれ変わったら友達になってほしい……そして紅葉を守ってほしいと託した……だから、俺は……」

 「冷血の狩狗……お前のその話、本当だな? 嘘偽りはないな?」

 「この話が嘘なら……俺はこの場で自害する……というより、お前に大人しく殺される。 お前が愛した楓を守れなかった俺をその手で殺すがいい……ただし、他のメンバーには手を出すな。 頼む……」


そう言ってハスキー先輩は白神の拘束を解いて、膝をついて頭を垂れた。

 白神は忍刀を振り下ろそうとした。

 しかし、手が震えて……視界がうまく見えなくて……出来なかった。

 

 「おい、冷血の狩狗……楓様は生まれ変わってるのか!!」

 「ああ、一緒にいた人間……迅雷……あいつがそうだ。 そして今俺が育てている小さな狼獣人は楓の遺伝子で作られたクローンだ」

 「そうか……そうだったんだ……あの時俺は楓様にまた会えたんだ……」

 

 完全に戦意を喪失した両者……涙ながらに愛した楓を思い涙を流す……。

 

 

 【ハスキー先輩vs白神狼牙】

 【勝負 引き分け】


――――――


 そして勝負の行方は迅雷に託された。

 とはいっても、もう勝敗は決まりそうであるけどね。

 

 「はぁ……はぁ……」

 

 秋月銀杏は消費していた。

 それは体力もだが、金も地位も、そして人員も。

 

 「あんた、あり得ないわよ……どんなトリック使ってるわけよ……」

 「トリック? そんなもの使ってないって」

 「嘘おっしゃい!! じゃあ、なんで2回連続でAのファイブカードが出るのよ!!」

 

 と、盤面上で公開された俺の手札に指を指す。

 今回の銀杏の手札はKのスリーカード。

 悪くはない手だ。

 けど、まあ……ファイブカードに比べたらね。

 

 「あんた……とんでもないわね」

 「そんなそんな……俺はちょっと賭け事に強いだけだよって……それより……さあさあ、第三ゲームに行ってみよう♪」

 

 とはいっても……銀杏に賭けられるのは後は紅葉だけだがな。

 

 「それでは第三ゲームを……」

 「ちょっと待った……」

 

 そう言うのは、消費している銀杏だ。

 

 「おや?銀杏様。 ゲームを途中リタイアされますか? そうすると、自動的に迅雷様の勝利になりますが……」

 「いいえ、そこの人間に聞きたいことがあってね……」

 「なんだい?」

 「なんであんた……紅葉様のために命賭けられるのよ……ついこの前まで他人だったあんたが……」

 「そりゃあ……俺は迅凱仙のみんなが好きだからだよ。 だからこそ……誰がどんな状態だろうと俺はみんなのために命を賭ける。 みんなも、俺のために命を賭けてくれる。 だからこそ、信頼し合える仲間ってやつなのさ」

 「仲間ね……ふふっ……生温くて私の一番嫌いな言葉……反吐が出る」

 「と言うわけだ。 秤さん、第三ゲームを……」

 「分かりました……」

 

 第三ゲーム開幕。

 という事で、イカサマイカサマ言われ続けているので俺はある手に出た。

 

 「……迅雷、どうしたの?」

 「彼岸、俺は手札を見ないことにした」

 「「はぁぁぁぁぁぁぁぁ??」」

 

 と、ここ一番の驚いた声が部屋中にこだました。

 

 「なに言ってるのよあんた!」

 「だって君がイカサマイカサマ言うから、俺はカードに触れない。 それなら、君も納得行くよね? これじゃあ、イカサマの仕様もないもん。 めくるときは秤さん……手間ですけど、お願いできますか?」

 「……分かりました。 よろしいですか?銀杏様」

 「……ふふっ……あははっ♪ 余裕ぶっちゃって……いいわよ!! それで負けたなら潔くあんたの強運を認めて紅葉様を返してやるわ!!」

 

 どこまで言っても強気な女性だ。

 母を思い出す。

 まあ、ここまで傲慢な人じゃないけどね。

 

 「……では両者、賭け金を」

 「オールベット……これまで得たもの、そして今まで持ってるもの全部」

 「……コール、分家の権限ならびに秋月一族宗家の紅葉様」

 「では、カードの交換に参ります……迅雷様は?」

 「そうだな……じゃあ、5枚全部」

 「「はぁぁぁぁぁぁぁ??」」

 

 ここでまた驚きの声が広がる。

 正直うるさいな。

 

 「承知致しました……では、銀杏様は?」

 「……3枚で」

 

 この時、銀杏の手札はAのフォーカード。

 ほぼ理想の手札と言える。

 だがしかし、よぎるのは先程までのファイブカードの2連続による敗北……。

 本当に勝てるのか……その疑念が彼女を惑わしている。

 

 「では、勝負はこれでよろしいですね?」

 「うん、俺はいいよ~」

 「わ、わた……わたし……も……はぁ……はぁ……」

 「どうかしました? だいぶ息があがってるよ?」

 「う、うるさい!!」


 この勝負に負ければすべてを失う。

 地位も財産も……なにより、金づるのためにわざわざ戻した紅葉さえも。

 そんな心理状態を察している俺は更に続ける。

 

 「大丈夫大丈夫~仮に君がフォーカードとか揃ってても余裕で勝てるから」

 「なっ!!」

 

 っと、銀杏は思わず声を漏らしてしまった。

 この事によって銀杏の手札はフォーカードであることが知れ渡ってしまったのだ。

 

 「はぁ……はぁ……」

 「さて、このままカードで負けて無様に敗北していくか……フォールドして土下座して許しをこうのか……君はどっちを取るんだろうね」

 「はぁ……はぁ……」

 「なんか……迅雷怖い……」

 「今のあれは天野教授そっくり……」

 

 さて、とどめといこうかね。

 

 「さあ、さあ、さあ、さあ!! 勝負するの!? 降りるの!? どっち!! ここで死ぬか!!ここで終わるか!!さあ、さあ、さあ、さあ!!」

 「きゃっ……!! ひっぐぅ……うぅ……フォ……フォールド……わ、私の……ま

……け……」

 

 バタッ、と銀杏は白目を向いて泡を吹きながら倒れた。

 

 「ゲームセット……この勝負、迅雷様の勝ちです」

 「やれやれ……彼岸!! 紅葉の呪いを解いて!! 早く!!」

 「う、うん!!」

 

 と、彼岸は紅葉に寄り添い、呪いを解き始める。

 

 「しかし、迅雷様……あなたの運は凄まじいですね」

 

 と、秤が言う。

 にこりと微笑んで俺は言う。

 

 「まぐれですよ……ほら、だって今回の手は……」

 

 と、カードをめくる。

 すると、秤は思わず微笑んでしまった。

 

 「おやおや、これはこれは……」

 「えへへっ♪」

 

 絵柄も数字もなにも揃っていない……つまりは、役が揃っていない。

 ブタ。

 ポーカーで必ず敗北する手札だ。

 つまりは、最後の最後で俺はブタの手札で勝利を得たわけだ。

 やれやれ、ギャンブルはこれだから面白いんだよね。

 

 「この勝負……俺の勝ちだ」

 

 ブタのカードを銀杏に放り投げ、俺は紅葉のもとへと駆け寄るのだった。

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