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狼シェフと愉快なレストラン  作者: ただっち
第1部:秋月一族編
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絶対審判者のゲーム

「こっちだよ」

 

 楓博士の案内で、俺たちは進んでいく。

 見取り図を見ながら、そして楓博士の記憶を頼りに進む。

 こちらの戦闘要因は万全だ。

 変態だがチートの雷オーナー。

 最強の陰陽師の彼岸。

 この二人がいれば、とりあえずはなんとかなる。

 

 「次の角を曲がって……」

 「危ない」

 

 と、雷オーナーは咄嗟に楓博士の前に立って放たれた銃弾をキャッチする。

 

 「おやおや、マグナムだなんて……そんな無粋なものを子供に向けるものではありませんよ」

 

 と、銃弾を放たれた時の速度で放たれた方向へと弾き返す。

 

 「す、すごい……あの時のナイトと同じ……」

 「ふふっ。 これくらい出来なくて、ショタケモは愛せませんよ」

 

 最後の台詞がなければかっこよかったのにな。

 

 「彼岸……後ろは任せましたよ」

 「分かりました」

 

 仕事用の服を着ている彼岸は札を構え、警戒心を研ぎ澄ましている。

 やっぱり、陰陽師の時の彼岸は別人のようにキリッとしているな。

 

 「この奥の階段の奥に恐らく彼らはいるよ」

 「この先は何があるんだ?」

 「分家の本館……つまりは、悪の巣窟さ」

 「なるほど……」

 

 そう言いながらも、銃弾は次々と放たれるが、雷オーナーと彼岸は弾き返していく。

 

 「よし、ここだ」

 

 と、通路を指差す。

 

 「ちなみにここから、どの方向になんメートルか分かりますか?」

 「うーん……直線で南に50mかな」

 「分かりました。 では皆さん、私の背中に捕まってください」

 

 と、俺たちは雷オーナーに捕まった。

 

 「奥義……明鏡止水」

 

 その瞬間、すべての時間が止まった。

 そして、そのなかを雷オーナーは悠然と歩いていく。

 壁を破壊しながら、まっすぐに……。

 

 「ふむ……強度はクッキーほどにしかないのかねここの壁は。 うちのレストランみたいに防弾設備にしないとダメなんじゃないのかね」

 

 そんなことをいいながら悠然と歩いていく。

 

 「明鏡止水、解除」

 

 といった瞬間、先程破壊して来た壁の破壊音が屋敷に響き渡る。

 そして、その音に反応して警備の者たちは駆けつける。

 が、時すでに遅し。

 もうそこには誰もいない。

 これぞ、雷オーナーの時間を止めて行動する奥義……明鏡止水。

 

 「さて、皆さんつきましたよ……」

 

 そう言う俺たちの前には、気を失って眠っている紅葉と、それに寄り添う分家の爺さんたち……そして、許嫁といっていた銀杏の姿だった。


「あらあら、招かねざる客のようで」

 

 銀杏は微笑みながら、イラついている。

 持っていた扇子を握力で壊してしまうほどに。

 

 「先程はよくもやってくれましたね……」

 「あらあら、雷殿。 言いがかりはよしてください。 私は紅葉様が来るって言ったから連れてきただけよ」

 「とはいっても……そうですね。 じゃあ、なぜ……紅葉が呪いを受けて眠っているのですか?」

 

 ぎょっとしたように目を見開いて銀杏は紅葉を見るが、すぐに微笑む。

 

 「ええ、まあ……呪いというより、洗脳ですね。 私を愛し、そこの人間の存在を忘れる洗脳……」

 「なんだと!!」

 

 俺は思わず声を大きくして言う。

 そんなことされたら……。

 

 「うふふっ♪ 素敵よね」

 「彼岸、解除出来ないのか?」

 「近づいて術をかけられるなら、なんとかなるかも……」

 「ねぇ……ちょっとした、ゲームしない?」

 

 そう、言って銀杏は懐からトランプを取り出した。

 

 「私、今ギャンブルにはまっていてね……折角だし、ここはゲームで決めない? 紅葉様のことを……どうするか」

 「誰がそんな……」

 「いいよ、分かった……」

 

 そう言ったのは俺だった。

 

 「本当にそれで諦めて紅葉を帰すと約束すると誓約書を書いて俺たちに渡せ……こちらも、誓約書を書いてお前たちに渡そう。 負けた方は紅葉の恋愛事情ならびに紅葉に関与することは禁ずる……これでどうだ?」

 

 ニヤリと怪しく微笑む銀杏は快く承諾した。

 

 「じゃあ、公平なジャッジをおこなって貰うために……来て!!」

 

 と、楓博士の声と共に現れたのは、白い毛並みをした小さな狼獣人だった。

 

 「始めまして。 今回ゲームのジャッジを勤めます(はかり)でございます。 よろしくお願いいたします」

 「だ、誰だそいつは!!」

 「秋月一族宗家の隠密部隊とは別に存在する、法を守る番人。 その長が彼だ」

 「ショタケモキタァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」

 「雷オーナーうるさい!!」

 

 その法の番人が現れた瞬間、分家の爺さんたちはガタガタと震えていた。

 

 「おや?分家の皆様。 楓様との密約を破って紅葉様をこの場にもしやお連れしたのですか?」

 

 と、懐から鎖を取り出してじゃらじゃらと鳴らしている。

 しかし、銀杏はにこりと微笑んでいる。

 

 「いいえ、紅葉様が自ら望んで帰ってきたのです。 ですから、無理矢理は連れてきていませんよ♪」

 「ふむ、よかった……分家とはいえ、約束を害するものは処分しなければなりませんからね」

 

 じゃらじゃらと鎖を再びしまう。

 そして、楓博士の姿を見て涙を溢していた。

 

 「楓様……お久しゅう……再び呼んでいただけるとは光栄の至り」

 「秤、久しぶり♪ 元気そうで良かったよ♪」

 「あー、死して生まれ変わったと聞いておりました……こうしてお会いできて嬉しいです……しかし、勝負では平等……宗家と言えど、あなたに荷担することは致しませんよ」

 「うん、そうしてくれ……じゃあ、ゲーム……やろうか」

 

 こうして俺は、平等な審判の元……紅葉をかけたギャンブルに挑むことになったのだった。

 絶対……負けないから。

 もうすぐだからね、紅葉。


 銀杏は秤にトランプを手渡した。

 その際、秤は念入りにトランプを調べて、不正、その他インチキが無いことを確認し、未開封だったトランプを開いた。

 

 「では、本日は……どのようなゲームを?」

 

 テーブルと椅子をいつの間にか用意され、そこに俺と銀杏は対峙する如く対面していた。

 

 「そうね……ポーカーなんてどうかしら?」

 「ポーカー……か。 いいよ」

 「5ゲーム中3勝で勝利……でどうかしら?」

 「いいよ……それで」

 

 とにかく早くこの勝負を終わらせて、彼岸に紅葉の呪いを解いて貰わないと。

 

 「んじゃあ……賭け金を決めなきゃね」

 「賭け金?」

 「ええっ……私たちはこれから紅葉様をかけて勝負するのよ? それに、ポーカーなんだから賭け金は必要じゃない」

 「……分かった」

 「ただし、今回賭けるのは現金じゃなくて……人材よ。 例えばうちの宗家隠密部隊隊長の白神をベットして、あなたが勝負に勝てば白神はあなたのものということ」

 「逆にこちらが、例えば彼岸をベットして負ければ彼岸がそちらのものになると……」

 「理解が早くていいわね♪」

 

 ふふっと、銀杏は不気味に笑う。

 ずいぶん強気だ。

 

 「そして賭け金は、決着が付き次第……支払うこと。 これがルール。 いいかしら?」

 「つまり、もし雷オーナーと彼岸がそちらに手渡った状態で俺が負ければ」

 「ええっ……即座に貴方は殺されるでしょうね……私が命令して二人の手で」

 

 あははっと高笑いしてこちらの緊張を誘っているようだが……甘いな。

 

 「いいよ……さあ、やろう……命を賭けたギャンブルをね」

 

 俺は微笑み返した。

 ピクッとそれに反応するように、銀杏の眉は潜めたが、直ぐ様目付きが鋭くなり、勝負の状態になったわけだ。


 「それでは、人材を賭けたギャンブル……ポーカーを始めます」

 

 秤は手際よくトランプをシャッフルする。

 ディーラーでも経験したのかと言うほどに、それはそれは見事な手つきだった。

 

 「さて、お二方……それぞれ山札から何枚シャッフルしますか?」

 「そうね……13枚目で」

 「俺は25枚目だ」

 

 パラパラっとカードをすかさずシャッフルし直し、秤は俺と銀杏に5枚ずつカードを配る。

 

 「ふむ……」

 

 5枚のカードに目を通す俺。

 まあ、最初だしこんなもんだよな。

 

 「それではお二方、ベット、フォールドをお選びください」

 「ベット……彼岸、雷オーナー、楓博士、レオ、ハスキー先輩」

 

 俺のこの勝負初っぱなからの大賭けに思わず周りがざわついた。

 

 「おい、迅雷……大丈夫なのか?」

 「……迅雷を信じましょう。 なにせ、あの人の息子なのだから」

 

 そうだよ、彼岸……雷オーナー。

 俺を信じてくれ。

 

 「あらあら、よほどいい手でも来たのかしら? それともハッタリ?」

 「秤さん、フォールドした場合は降りなかった方の勝ち……でいいよな?」

 「ええ。 そうですね。 その場合、チップは勝者側に行き渡るという事に致しますよ」

 「なるほど……んで、銀杏さんはどうするの?」

 「ふふっ……コール。 白神隊長、秤、宗家のお側人全員」

 

 これまたざわついた。

 分家の爺さんたちは、相当焦っている。

 が、分家の人間が宗家に仕える者を勝手に動かしてよいのやら……。

 

 「それでは、カードの交換に応じます……何枚交換しますか?」

 「俺はしない」

 「私は2枚で……」

 

 パラパラっと、カードを2枚交換した銀杏は微笑んでいる。

 まるで勝ち誇ったように。

 

 「では、お二方……勝負でいいですね?」

 「いいよ」

 「ええ、よろしくてよ……」

 「それでは、カードオープン!!」


――――――


銀杏の手札は、Kのカードが三枚、そしてQのカードが二枚のフルハウスだ。

 対して俺の手札は……。

 

 「えっ?」

 「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」

 

 と、周りがざわついた。

 そりゃそうだ。

 だって、こんな手……そうそう見れないよ。

 

 「嘘でしょあんた!! イカサマしたでしょ!!」

 「秤くん、イカサマしたって言われてるんだけど……俺、普通に君からカード貰って交換せずにそのまま行っただけだよね?」

 「ええ。 私が監視しているこの状況でのイカサマは不可能に近い……ですから、これは迅雷様の運……ということですね。 正直ディーラーである私も驚いておりますが……」

 

 と、生唾を飲み込み盤面の俺の手札を見る。

 Aが4枚、ジョーカー1枚……つまり、ファイブカード。

 ポーカーで最も強いとされている手札だ。

 まずは、一勝……。

 

 「さあ、次のゲーム……やろうか?」

 

 と、俺は微笑む。

 ごめんね……ギャンブルって実は得意なんだ。

 伊達にラスベガスのカジノから出禁喰らってないからね―――――。

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