3 カルマについて
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森の奥には大戦時に利用されていた施設が残っている。石で作られた遺跡のような構造で、入り組んだ迷路のようになっていた。
廃墟となった場所には『カルマ』が寄り付くとされ、その例に漏れず、そこには奇妙な存在が蔓延っていた。
丸いシルエットに透き通るような体表。眼も口もなく、耳もない。
いわゆるスライムのような存在であるが、蠢く数体の中には確かに生き物を型どったようなものもいる。
カルマと呼ばれる災厄であり、人々にとっての公害である。
カルマに触れたものは腐敗し、その土地には死臭が蔓延する。
カルマを除去するためには木符によって生み出された力を使うほかなく、あとは寄り付かない、隔離をすることでしか対処方法は確率されていない。
木符で生み出された力にはアルマと呼ばれる力が存在し、その力によってカルマは浄化される。
なお、意思はなく、生命活動も行われていない。と、言われている。
「うようよいる」
「うじゃうじゃですわ」
離れた場所から遠目に見ているふたりはカルマを見つけると、気持ちの悪いものを見るようにしかめっ面を浮かべた。
「今日はここの制圧をするぞー。ふたりとも木符の準備は万端かな?」
これから遠足に向かう引率教員のごとく男は語り、少女たちもどこか気の抜けたように「「はーい」」と生返事を返した。
その反応をみて男がほくそ笑んだことに、ふたりは気づかない。
気づかないまま、ふたりは男から言われた木符をポケットから取り出し、念じるように表面をなぞった。
なぞられた表面からは光の輪が幾重にも広がり、その光のなかへと手を伸ばすと空間が切り取られたように少女の右手がすっぽりと消えた。
ふたたび褐色黒髪の少女の手が引き戻されると、そこには白金に輝く棍が握られていた。
「あらあら。カノンさんはまだ『R』までしかお使えになりませんの?」
煽るように言うアリシアに、カノンと呼ばれた褐色黒髪の少女は負けじと笑って返す。
「ボクにとってはこれだけで充分なの。せせこましくちっさい『A』なんかばっか使ってると、どこかのやっすいお嬢様みたいになっちゃうからねえ」
「あら。言いましたわね」
「やるか」
「乗りましたわ」
「ようし。どっちが多く倒すか」
「競争ですわ」
売り言葉に買い言葉。およそ淑女とは程遠い炎を眼に宿しながら、カノンとアリシアは眼前のカルマに突っ込むのであった。
「うん。あいつらには痛い目を見てもらおう」
男はひとり、ふたりの背中を見届けながら意地の悪い笑みを浮かべるのであった。