12 試練開始
遺跡下層の奥へと進み、たどり着いたのは礼拝堂である。
先日のカルマ退治により道中の敵は苦もなく進むことができ、いざ最深部へと乗り込んだ二人、そこで待ち受けていたのは朽ち果てた礼拝堂、祭壇に祀られているカルマのコアであった。
「これは……もうこれ……壊して終わりでいいんじゃない?」
「それで終われば楽でしょうけど……、そうはならないでしょうね」
「ダヨネー……」
慎重に、静かに歩みを進める。
祭壇に祀られているカルマのコアはどのような力学か、宙に浮いており、その色は黒ずんでいる。宇宙でも内包されているのではないかと思えるほど黒く、そのなかには銀河のように渦をまく輝きが蠢いている。
ふたりはカルマのコアだけが不自然に形を残している姿を見たことがなく、聞いたこともない。不気味な色と空気に緊張感を研ぎ澄ませて、木符の射程距離まで近づいていく。
彼我の距離にして、まだ10メートルほど。
ふたりの射程距離にはまだ足りない距離のなか、相手の警戒網には入りこんでいたようであった。
「―――なにか来る」
「ええ」
ふたりが勘づき、警戒態勢をとる。
祭壇のカルマコアはその球体を震わせ、その形を大きく変えた。
カルマとは、その強さによって姿を変える。
スライムのように小さく、最弱レベルのものであればFランク。
獣のように大きくなり、形をとればEからDへと変動する。
また、人型やキメラ型も存在し、これはAからCへと広がる。ふたりが先日出くわした人の上部に馬の下部のものはこれに該当し、ケンタウロス―カルマと称される。これらよりさらに上位となれば、未知なる姿へと変貌を遂げるとされている。
当然、ランクが上がるほどに危険度があがる。
では此度のカルマはどれに属するか。
ふたりの内心点数ではEXといったところであった。
「……なんか霧が集まって、え、なにあれ、もうさっさと攻撃すべきなんじゃ」
「不用意に近づいたらどこから攻撃されるかわかりませんわよ!」
黒い球体は霧を吸収するかのように周囲の空気を巻き込んでいく。
近づいた空気は暗く黒く雲のように、カルマのコアを中心とした身体の生成を開始する。
そうして出来上がった姿は、どこか先日のカルマとの既視感を覚えたものだった。
「人の顔―――じゃあないよね」
「下が人型、上は、馬か牛か、キメラ型ですわ……けど」
「「でっか」」
人型は人型であっても、巨人型。
高度にして3メートル、ミノタウロス―カルマがそこにいた。